真っ暗闇の照明オペレート

今日は、1ヶ月ぶりに音楽ホールでお仕事です。
内容は、明日開催される、室内楽オケとヴァイオリニストのリサイタルのリハーサルです。リサイタルと言っても、普通のリサイタルではなく障害と音楽というテーマで、演奏の途中でホール内を完全暗転状態にし、真っ暗な中で演奏を聴いてもらうといった演出があります。
第一部は、2名のヴァイオリニストによるソロリサイタル。第二部は、ソロヴァイオリニストと室内オケとの共演です。
明日が本番で、今日は夜からリハーサルです。
チェンバロに触る
舞台図面を予め見ていて、何やらピアノにしてはずいぶんぺったんこな形をしているなと思っていたら、チェンバロでした。
チェンバロは、英語名でハープシコードといいます。ピアノと似たような形をしていますが、弦を叩くのではなく弾いて(はじいて)音を出します。音は、チャンチャンと言った感じ。
このチェンバロという楽器を一度は見てみたいとは思っていたくらげ。しかし今まで一度も出会う機会がなく、今日やっと本物のチェンバロにお目にかかることができたのです。
初めて見るチェンバロは、何だかピアノがやせ細って貧弱になってしまったかのような形をしています。
参照までに、この画像で形や音色をご確認ください。形は一緒ですが、実際に今日使われるチェンバロの色は鮮やかな赤です。
少し触らせてもらいました。
指先でそっと押し込むようにすると、上の鍵盤が一瞬ずれて押されるため音色が変化しますが、一気に押し込むと同時に弦が弾かれるため音色の変化はありません。ごく弱いタッチで演奏するため、うまく音色を変化させるにはコツがいります。
演奏者さんによると、やはりこれだけタッチが弱いと自分にはしっかり聴こえていても客席では聴こえないというようなこともあるそうです。
また、ピアノのように頑丈なフレームが備わっているわけではないので衝撃に弱く、持ち運びには十分な注意が必要です。
そして、弦も狂いやすいため、演奏が終わるごとにギターのように調弦も必要です。
これだけ繊細で弱いタッチで演奏されているため、バロック時代の音楽は現在の楽器で演奏されているのとはまた違っていたのかもしれません。
リハーサル
演奏者が揃ったところで、リハーサル開始です。
今回、全体の進行を仕切っている演出の方が入ります。照明は、すべて演出家からの指示で操作します。
進行表には、「2楽章の10小節目から徐々に暗転」と書かれていますが、くらげにはどこかがどこだかさっぱりなので、演出とは別の方にインカムで指示出ししてもらいます。
それでも基本はリサイタルなのでそこまで細かい演出はないだろうと踏んでいたのですが、蓋を開けてみるとまー細かい指示が客席に座っている演出家から飛んできます。
特に細かいのは、演奏中の暗転・明転のキッカケ。完全暗転の中での演奏中、キッカケから20秒でフェイド・イン。明るい状態での演奏中、キッカケから40秒でフェイド・アウトといった感じ。
そんなこともあって、すべてタイムを入れてGOボタンで操作しようとも思ったのですが、足元灯まで消した完全な真っ暗闇状態から一定のスピードでフェーダーを上げていくと、14%くらいからぐっと急に点灯した感を感じるます。真っ暗闇が数分間も続くと、瞳孔が開いて敏感になっているため、よけいに明るく感じてしまいます。
なので、20秒の間で最初はゆっくりじんわり上げていき、60%を超えたあたりから早めにフェーダーを上げて20秒で100%になるように調整するという操作を、どうやってタイムで打ち込めばいいのかが思い浮かばなかったため、マニュアルで対応することにしました。
調光室も真っ暗
芝居でも暗転することは珍しいことでもなんでもありませんが、それでも暗転状態は長くても1〜2分。
しかし、この演奏会では完全な暗転状態を演奏中に長くて10分近くキープします。
なので、調光室もできるかぎり明かりを落としています。
窓に写っている緑と赤の光は後ろのDMXユニットと電源盤のパイロットランプです。
先のように見えるのは、天井から降りている3点吊りマイクのケーブルがシーリングからのスポットに当たっているためです。
サブフェーダーの赤いパイロットランプでさえ眩しいので、隠しています。
かろうじて資料が見える状態。
これだけ暗いと、資料に赤ペンで書き込むと全く字が見えないということを発見しました。最初は、ついに老眼かと焦りましたよ。
こういうときは、太めの黒インクのボールペンだと判読できるということも発見しました。
普段はこの明るさ。
さて、無事にリハーサルも終わり、明日は本番です。
本番のお話:真っ暗闇の中で聴く室内楽