そらいろくらげが浮き輪で海に浮いているイラスト

真っ暗闇の中で聴く室内楽

さて、今日は本番日です。

リハーサルの風景:真っ暗闇の照明オペレート

今日の予定は、午前中にゲネプロ、午後から本番です。

本番

ゲネプロは省略し、本番の光景をダイジェストでお送りいたします。

定刻で客電ダウンとともに、舞台上の照明がフェイド・イン。MCのあとにヴァイオリニストが登場。
ヴァイオリニストが立ち位置に着いたところで、暗転。

となるところを、キッカケを見逃していて暗転が遅れ、演奏が始まってからの暗転になってしまいました。
でも失敗は引きづらない。気を取り直して、次のキューを確認。演奏中のキッカケは、キュー出しする方からキューを出してもらえるので、安心です。

1曲目は、ミルシテインのパガニーニアーナ。曲の途中から48秒かけてフェイド・インしていき、演奏終わりで100%になります。

暗闇の中のシャコンヌ

続いて2曲目と3曲目は演奏明かりに変化なしで。そして、第一部の4曲目は、「無伴奏ヴァイオリン・パルティータ 第2番 ニ短調 BWV1004より シャコンヌ」です。
この曲は、このホールに常駐していたときに初めて聴いた曲なのですが、とにかく圧巻です。

まずは、どんな曲かをこちらの映像でお聴きください。
演奏は日本のヴァイオリニスト界の名手、庄司紗矢香さんの演奏でお送りいたします。

曲が始まって5分後に30秒で演奏明かりをフェイド・アウト。そのあとは、10分近く真っ暗闇の中での演奏が続きます。
この曲は、演奏者のテクニックに圧感される以上に、演奏者の持つ何かを感じる曲です。

真っ暗闇の中で全身の感覚が研ぎ澄まされ、ヴァイオリンの音色がヒリヒリと刺すような刺激に感じられます。
このホールは、全体が反響板になっているシューボックス型のため、音に包まれるような感覚を味わうことができるホールです。調光室のモニターで聴いていてもそう感じるくらいなので、客席で聴いている観客はそれ以上に感じているかもしれません。

思わず調光卓の電源を落として、調光室さえも真っ暗闇にしてしまいたくなる衝動を抑えつつ、暗闇の中を音とともにさまよう不思議な時間を味わうことのできた10分間でした。

休憩後、第二部の開演です。
第二部は、室内楽オーケストラと、第一部で演奏した二名のソロヴァイオリニストとの共演です。
室内楽オーケストラは、第一ヴァイオリン、第二ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス、チェンバロで構成されています。

ヴィヴァルディの四季より「夏」

第二部の1曲目は、ヴィヴァルディ作曲、ヴァイオリン協奏曲「四季」より「夏」です。この曲は、第一番から第4番まで春夏秋冬で成り立っており、いちばん有名なのが「春」で誰もが聴いたことがある曲ですが、夏以降は馴染みのない曲だと思います。くらげ自身、夏は初めて聴きました。

それでは、まずこちらの映像で曲をお聴きください。

夏なので、夏っぽい爽やかな楽しい曲調だと思っていたんですけど、思ったよりも夏らしい爽やかさのない曲です。特に第二楽章なんて初っ端からかなり激しい曲調で始まります。何を思ってヴィヴァルディはこの曲を作曲したのだろう。そう思って、wikiで調べてみました。

第一楽章:アレグロ・ノン・モルト-アレグロ
かんかんと照りつける太陽の絶え間ない暑さで人と羊の群れはぐったりしている。松の木も燃えそうに熱い。カッコウの声が聞こえる。そしてキジバトの囀りが聞える。北風がそよ風を突然脇へ追い払う。やって来る嵐が怖くて慄く。ヴァイオリンの一瞬一瞬の“間”に続いての絶え間ない音の連続が荒れる嵐を表現している。

第二楽章:アレグロ・プレスト・アダージョ
稲妻と雷鳴の轟きで眠るどころではない、ブヨやハエが周りにすさまじくブンブン音を立てる。それは甲高い音でソロヴァイオリンによって奏でられる。

第三楽章:プレスト(夏の嵐)
嗚呼、彼の心配は現実となってしまった。上空の雷鳴と雹(ひょう)が誇らしげに伸びている穀物を打ち倒した。

(wikipedia『四季 (ヴィヴァルディ)』より引用)

なんか、最近の日本の夏にぴったりじゃないかと思いました。うだるような酷暑に、やがて黒雲が立ち込めてきて突然の激しい豪雨。ほんと、こんな感じです。

この曲の第二楽章か10小節目から、48秒かけて演奏明かりをフェードアウトしていきます。
まさに、青天の霹靂です。

ヴィヴァルディの四季より「冬」

続いて、第4番・冬。

こちらも、初めて聴いたのですがどこかで聴いた覚えのある曲です。
きっと誰もが耳にしたことがある、突き刺さるような緊張感のあふれる第一楽章は、ドラマや映画などの緊迫感のあるシーンでよく使われています。

冬は、こんな構成です。

第一楽章:アレグロ・ノン・モルト
寒さの中で身震いしている。足の冷たさを振り解くために歩き回る。辛さから歯が鳴る。ソロヴァイオリンの重音で歯のガチガチを表現している。

第二楽章:ラルゴ
外は大雨が降っている、中で暖炉で満足そうに休息。ゆっくりしたテンポで平和な時間が流れる。

第三楽章:アレグロ
私たちはゆっくりと用心深く、つまづいて倒れないようにして氷の上を歩く。ソロヴァイオリンは弓を長く使ってこの旋律を弾き、ゆっくりと静かな旋律に続く。しかし突然、滑って氷に叩きつけられた。氷が裂けて割れ、頑丈なドアから出ると外はシロッコと北風がビュービューと吹いていく。そんな冬であるが、もうすぐ楽しい春がやってくる。
(くらげ注:シロッコはフォルクスワーゲン社製の車のことです)

この第三番の冬では、暗い中から演奏が始まり、第一楽章19小節目から2小節かけて1分くらいで明るくなっていきます。
感じとしては、なんだか非常に寒い中で目が冷めたら外は猛吹雪だったというような、遭難しているようなイメージに感じました。

そして第二楽章では、雪が降り止んで外で雪遊びしているようなイメージをしていたのですが、この穏やかな雰囲気は室内でくつろいでいるのを描写していたのでした。
しかも、外は雪ではなく雨が降っているのです。
第三章は、大雪で足を取られながらもなんとか電車を乗り継いで会社へ向かう人たちのイメージが浮かびました。そして、それを一生懸命中継しているマスコミたちみたいな感じです。

続いて、3曲めの演奏は、バッハ作曲、2つのヴァイオリンのための協奏曲。
暗転から演奏が始まり、第一楽章の19小節目から20秒でフェイド・インしていきます。

この曲は、いかにもバロックと言った印象を受ける曲です。

管弦楽組曲第3番 BWV1068 第二楽章 「アリア」

アンコール曲は、バッハ作曲「アリア」です。

アリアといえば、「G線上のアリア」という名称で親しまれている有名な曲ですが、実はこの「G線上のアリア」という曲は、をヴァイオリニストのアウグスト・ウィルヘルミがピアノ伴奏付きのヴァイオリン独奏のために編曲した曲なのです。

この曲では、ベースになる低音部分をチェロ、コントラバスで演奏し、さらにハープやチェンバロが補強しています。演奏によっては、弦楽器のみの演奏で行われることもあります。
今回は、チェンバロの音色を十分に堪能できました。他の曲ではチェンバロの音色は目立たないことが多いのですが、ベース演奏とあってしっかりチェンバロの音色が引き立っているように感じます。

探すのに、苦労したチェンバロ入りのアリア。

こちらは、チェンバロなし。

改めてチェンバロが入っている状態で聴いてみると、まったく印象が変わります。

この曲では、暗転状態から演奏が始まり、真っ暗闇での演奏のまま演奏が終わります。そのため、全く演奏しているのが見えない状態で生の演奏を味わいます。
ここまでじっくりこのアリアを聴いたことはありません。なんて美しい音色なんでしょう。まるで空間をさまよっているような浮遊感を感じます。なんて贅沢な時間なんでしょう。ああ、客席で聴いてみたい。

そして、演奏会は無事に終了しました。
照明操作についても、初っ端やってしまいましたがリハで苦労しただけあって、主催者の方に喜んでいただくことができました。

仕事でクラシックを堪能できるなんて、なんて役得なんでしょう。

コメントを残す


This site uses Akismet to reduce spam. Learn how your comment data is processed.

goToTop