舞台で使用する高所作業用安全帯に関する問題と提言

照明用バトンがライトブリッジやライトキューブ型のホールや劇場、もしくは仮設現場でのイントレやトラスなど高所作業が発生するところでは、安全帯とヘルメット着用が義務となっています。

しかし、腰に巻く安全帯を着用してのシュート作業が本当に安全なのか、正しい装着方法については、あまり議論されていないと感じています。

そこで、安全帯の着用について考えてみることにします。

ほぼどこの劇場やホールにも常備されているタイプの安全帯

だいたい、どこのホールや劇場に置いてあるのが、腰に巻くタイプの胴ベルト型安全帯です。

その名の通り、ベルトを腰に巻き、フックをパイプなどに掛けて作業を行います。
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巷の安全帯はほぼ男性サイズ

そもそも、一般的に出回っている安全帯は男性サイズのため、女性の体型には合わないことが多いです。
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腰に巻くベルトは体型の大きな男性でも巻けるように長く作られており、女性が巻くとほぼ多めに余ります。この余ったベルトが非常に作業の邪魔になります。特に身体の小さい人やウエストの細いにとっては余り方が半端じゃありません。

またしっかり腰で固定していても作業していると、いつの間にか安全帯のベルト部分がお腹の方までずり上がってくるのです。
ベルトをお腹の位置で巻いていると何がキケンかというと、万が一転落して宙吊り状態になったときに内蔵が圧迫されることです。
最悪転落死は免れたとしても、内臓破裂で死亡する可能性が高くなります。これではいったい何のための安全帯なのかわかりません。

時間に余裕があるときは意識して骨盤の位置まで戻しますが、時間のない中でのシュート中はそんな余裕もなく、「今落ちたら確実に内臓破裂で死ぬな」と思いながら、ブリッジから身を乗り出して作業していたりします。

男性と女性の骨盤の違い

骨盤の形状は、男性と女性によって形状が変わります。男性は細くて深く、女性は浅くて広い形状をしています。また、出産の際に伸び縮みしやすいような構造になっており、生理の時にも開閉しています。

また、肋骨の形状にも違いが見られます。男性は上から下まで同じ幅に対し、女性は下の方にいくにつれ細くなっていくのでウエストのくびれができます。そのため、どうしてもベルトがくびれ位置までずり上がっていきやすいのです。
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こういった違いからも、男性サイズの胴ベルト型安全帯を女性が巻くことじたい、全く安全ではないということなのです。

女性に向いている安全帯

では、女性に向いている安全帯にはどんなものがあるのでしょうか。ということで調べてみました。

胴ベルト型安全帯

女性・細身の方用の胴ベルト型安全帯です。フック安全装置部は軽量アルミオレンジカラーアルマイト加工されています。
業界初のワンハンド(片手操作)機構を搭載しており、織ロープ(ストラップ)の繰り出しから収納までを片手で操作できます。

織ロープを少し引き出すだけで、自動的に巻き取ることができます。
ロープ途中停止機能、ロック機能、自在回転機能フック、ワンタッチバックル付です。

こちらはダブルランヤード型。
「安全帯の規格」で規制されているU字つり使用ができないよう、副ランヤードのフックがロリップ環に掛けられない構造になった安全設計です。
アルミバックル・アルミ合金製フック付の超軽量タイプです。副ランヤードは天然ゴムで通常70%縮んでいますので、引っ掛かりにくくなっています。

安全帯のフックを掛け替える時の無胴綱状態を無くして墜落災害をシャットアウトします。

ハーネス型安全帯

厚生労働省では、労働安全衛生法施行令(安衛法)と労働安全衛生規則(安衛則)の一部を改正し、2019年2月1日に施行しました。
安全帯を「墜落制止用器具」に変更し、(高さ6.75m(メートル)以上の高所(建設業では5m以上で推奨)では、使用する墜落制止用器具を「フルハーネス型」に原則化されました。ハーネス型安全帯を推奨しています。

ハーネス型のメリットは、転落時に荷重分担してくれるので、腹部に負担がかからないということ。最悪、関節脱臼くらいで済むのではないでしょうか。
デメリットとしては、調整と装着に時間がかかるということです。ただ、安全には代えがたいところです。

こちらは、さくらシリーズのハーネス型です。いろいろと女性にやさしい作りになっています。

女性専用のサイズで体にピッタリフィットします。

こちらは藤井電工のツヨロン。赤いベルトがかっこいいです。身体に合わせて調節できる、安全と快適を実現した女性専用ハーネスで、胸ベルトの位置が上下調節可能です。身体に無理なくフィットするので快適に装着できます。
骨盤ベルトはでん部に沿いやすく湾曲し、腰部の交差部が可動するので屈んだときの突っ張り感を軽減します。

身体に合わせて調節できる、安全と快適を実現した女性専用ハーネス。

締めくくり

安全安全と声高らかに叫ばれている舞台業界ですが、こうした根本的なところに目が向けられていないと感じています。

ただ、改めて女性用の安全帯を探してみると、思った以上に少ないという印象でした。しかし、建設現場以上に女性比率の高い舞台業界では、女性用安全帯の開発がもっと進んでもいいのではないでしょうか。
舞台照明メーカー、舞台設備業者などで女性向け安全用品の開発を進めてくれたら、もっと安全に作業できると思います。

また、ハーネスを導入する場合はどうしても装着に時間がかかってしまうのがネックですが、たとえ時間のない現場だったとしてもそこはチーフが安全のために必要な時間として配慮して欲しいと思います。
今一度、安全第一という原点に立ち返り、業界全体でこの問題を考えてみませんか?



12 Comments

RC返町

安全が叫ばれていますが、実際には、、、、、、、

私としては

・通常作業時もせめて着帽
・所作台を使わない場合は安全靴
・垂直階段にはベルブロック
・仕込み中はできれば黒服ではなく、蛍光オレンジとか
・バトン昇降時の合図者の明確化

などが必要かと思っています。

あと、夜に外の駐車場や、路上での荷役には反射ベスト着用も!

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そらいろくらげ

いらっしゃいませー。

通常作業時もせめて着帽
→仕込み時はヘルメットではなくせめて着帽もしたいですね。

所作台を使わない場合は安全靴
→ヘルメットと安全帯は定着してきましたが、安全靴についてはまだまだですね。
かくいうくらげ自身も安全靴についてはつい最近まで導入をまったく考えていませんでした。

垂直階段にはベルブロック
→ベルブロック、初めて聞きました。これはほしいですね。舞台からスノコへの垂直階段を登ったことがありましたが安全帯も何もなくて怖かったです。

バトン昇降時の合図者の明確化
→乗り打ちでバタバタしているときに指示が統一されないことが起こりがちですね。

仕込み中はできれば黒服ではなく、蛍光オレンジとか
→「スタッフは黒!!」っていう舞台の常識みたいなものが定着してしまっていますからね。
せめて劇場スタッフは目立つ色のほうが識別できていいとは思うのですが、なかなかできないですね。

夜に外の駐車場や、路上での荷役には反射ベスト着用も
→なるほど「外」に関してはまったく考えていませんでした。夜の駐車場での安全管理も大切ですね。

安全に関して見落としな点を挙げていただきありがとうございます。
他のホールや劇場と連携して問題提議や情報交換できたらいいんですけど、公共劇場舞台技術者連絡会みたいな団体に入っていないと厳しいですね。

RC返町

>夜の駐車場での安全管理も大切ですね。

自分が轢かれないという事も重要ですが、他人を犯罪者にしないというのも重要な観点かと思います。

都内の小劇場などでは路上での荷扱が多いですし。

そらいろくらげ

なるほど、「他人を犯罪者にしない」というのは当たり前のようでいて忘れられている観点ですね。
また、義務だから言われたから着用するのではなく、「自分の身は自分で守る」という意味でも自ら進んで着用する風潮にしたいですね。

シンバル

一般高所用安全帯の点検・交換時期(俗にいう胴ベルト型)
http://www.sanko-titan.co.jp/aboutsafety/gexc.html

ハーネス型安全帯の点検・交換時期
http://www.sanko-titan.co.jp/aboutsafety/hexc.html

ランヤード部分の点検・交換時期
http://www.sanko-titan.co.jp/aboutsafety/lexc.html#lanyard_rope

安全帯使用上の注意
http://www.sanko-titan.co.jp/aboutsafety/notes.html
というのを、安全帯のメーカーの方からの教えて頂きました。

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そらいろくらげ

安全帯の交換時期については、いずれコヤツキinfoで書く予定でした。
参考にさせていただきます。

シンバル

『安全帯の装着時及び使用時』の注意事項の記事にサバ折状態での落下のイラストが在ります。あと、ベルトタイプだと、腰に、フックを引っ掛ける、D環や、収納できる巾着が着いていたモノも有ります。

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シンバル

海外の記事を読むと、フルハーネス型で、ポールに引っ搔けて、垂直方向に梯子を上って行って、上で水平方向に掛けかえるというのが、WLFのセミナー議事録集で読めます。確か、照明の現場では無いのですが、ベルトタイプの安全帯装着時に落下して、腰の一点に負荷がかかって脊髄をやっちゃって、車椅子生活にという噂だけは良く聞きますが、当事者を見た事はありません。

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sorairokurage

いらっしゃいませー。

へー、そんな噂があるんですね。初めて聞きました。でも確かに脊髄はやられそうです。

ベルトタイプの危険性、一番知っておかないといけないのは小屋付きだと思うんですけど、あまり取り上げられたことないですね。
もっと照明家協会で話題にして欲しいところです。

みかんうさぎ

おはようございます。
私も以前から安全帯については、いろいろ思うことがあります。最大の問題は、うちの小屋の安全帯が古くて怖すぎで信用ならないこと。
新しいのを買って貰おうとしてるんですが、いまいちピンときたものなかったので、紹介してもらえてありがたいです。

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sorairokurage

いらっしゃいませー。

実は安全帯の寿命は3年ほどらしいです。今回色々調べてみて知りました。
つい買って安心しちゃうんですよね。
前にいた多目的ホールでは20年近く同じの使っていました。あぶねー。

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