ホールで初めて照明を使う人のための段取り【シュート】

ホールで初めて照明を使う人のための段取り、第一弾では搬入から仕込みまでを書きました。第二弾では、シュート(フォーカス)の方法について書いていきます。

前回のお話:ホールで初めて照明を使う人のための段取り・1【搬入〜仕込みまで】

シュートは、「フォーカス合わせ」もしくは「フォーカス」ともいいます。プランナーが舞台上で当たりを指示し、1名が調光卓でフェーダー送りを行います。残りのメンバーは実働部隊です。

現場によっては2名が介錯棒を持ってサスのシュートをしつつ、もう2名が同時に前明かりのシュートに回ります。ただし、前明かりをしょんぼり点けてある程度明かりが混じってしまっている中で当たりを合わせるのは慣れている人でないと難しいので、時間のある時はサスだけを合わせたほうが確実に合わせられます。

今回は3名で介錯棒を持ってサスのシュートを行うことにします。

シュートの流れ

  1. シュートの準備
  2. サスのシュート
  3. フロントサイドのシュート
  4. シーリングのシュート
  5. フロア周りのシュート

1.シュートに入る前の準備

シュートに入る前に、介錯棒を出してきます。介錯棒は上手袖か下手袖の奥の方にひっそりと立て掛けられています。ホールや劇場によっては非常に見つけにくい場所に置いてあるので、見当たらなかったらホール・劇場スタッフに聞いてみましょう。

介錯棒は現在アルミの伸縮タイプが主流ですが、未だに竹竿のところもあります。
アルミの場合は、一度持ってみてサスに届くちょうどいい高さに伸ばしておき、しっかりと蝶ネジを固定しましょう。この蝶ネジがゆるいと灯体を回すときに一緒に回ってしまい、一度介錯棒を降ろして締め直す羽目になります。

竹竿は太いものだと女性などの手が小さい人だと持ちにくいので、自分の手にしっくり合うものを探しておきましょう。

アルミ介錯棒の持ち上げ方については下記のブログを参照してください。
介錯棒(竿)について【1】|PACかわら版

また、サスのあとに続けて前明かりに行くので、フロントサイドライトとシーリングライト用のゼラを用意しておきます。下手フロント、上手フロント、シーリングライト用の色をショッピングバッグなどに入れておくと持ち歩くのにじゃまになりません。

調光卓に着く人(”送り”という)は、トランシーバーがあればトランシーバーを持って調光卓で待機します。

シュートのときは舞台も客席も暗くなりますので、チーフは「照明、シュート入ります」と周知します。

今回の公演では使用予定がありませんが、スモークを炊いてビームを見ながらシュートするときは、スモークを炊く準備をしておきます。

注意
スモークマシンを使用する時間帯は、煙による自動火災報知機感知器誤作動を防ぐためにやむなく自動火災報知設備の警報音を停止します。この作業は防災センターの立会などで時間がかかることもありますので、予定よりも早い時間帯から使用する際は早い段階でホール・劇場スタッフに伝えてください。

2.サスのシュート

プランナーはチャンネル表を見ながら、「15番ください。」と灯体のチャンネル番号を調光卓の人に伝えて、点灯してもらいます。調光卓の人は、「10番ください」と言われたら先に10番のチャンネル(フェーダー)を上げてから前に上げていたチャンネルを落とします。

エリア明かりやセット当てなど、ある場面のみ使うものがあるときは舞台監督に場面転換をしてもらいながらシュートしていくので、場面毎に分けてシュートしましょう。

灯体を動かす方向の指示の仕方は、灯体の首を上げるときは首上げ、下げるときは首下げ、舞台奥に振るときは奥振り、舞台前に振るときは前振り、下手に振るときは下振り、上手に振るときは上振りです。

介錯棒の基本的な使い方

サスのシュートは、介錯棒の扱い方がキモです。チーフに言われたとおりの方向にすぐ振るためには、灯体のどの部分に掛けて動かすかということを知っておく必要があります。
仕込みのときに灯体を観察して、灯体のハンドルは右と左のどちらに付いているのか、引っ掛ける場所などを確認しておきましょう。

アルミ介錯棒の使い方

凸レンズスポット、フレネルレンズスポットの首上げ首下げは単純な形なので力を掛ける場所を間違えなければすぐに動かせます。

真下に向いているスポットライトはスポットライトの照射面を突くと首上げ首下げができます。このとき、誤ってフィルターを突いてしまわないように注意しましょう。
仮シュートのときに首を横にしたときは、「首を横に振ってます」と介錯棒を持っている人に伝えると、介錯帽の先端を掛ける場所を把握しやすいです。

角度の付いているスポットライトの首を下げるときは、灯体下部に介錯棒の先端を軽く押し付けて後方に滑らせると、つなぎ目部分で引っかかりますので、引っかかったところでぐっと上に突き上げると灯体が下を向きます。

逆に首上げのときは前面に滑らせて引っかかったところで突き上げると灯体が下を向きます。

ソースフォーとパーライトは慣れるまでは少し難しいです。ソースフォーはパーツが多いので羽に当たって動いてしまったりするので慎重に当てる位置を探ります。パーライトは、つるつるしていて引っ掛けにくいのですが、支点を探して力を加えれば動きます。

パーライトの灯体後部の穴に引っ掛ける方法は、高度な技で慣れないうちは外すときにケーブルに引っ掛けてしまいせっかく当たりを決めたのに動かしてしまったということが起こりますが、慣れてしまえばこの穴に引っ掛けた状態で首上げ首下げ上振り下振りまでできてしまいます。

上振り下振りは、先端の鈎の部分に力を加えて動かすので、掛ける方向を変えます。

竹竿の使い方

竹竿の場合はアルミと違って先端に鍵状の金属が付いていませんので(ホールや劇場によっては先端に金具を付けて改良したものを置いているところもある)、基本的に先端でつついて動かします。

上振り、下振りの場合は側面に押し付けるようにして動かします。竹はしなりますので、このしなりを利用してぐいっと動かすと固くて動きにくい灯体も動かすことができます。
また、アルミと違って柔らかい素材の性質を利用してコツコツと叩いて振ることもあります。

地明り

地明りのベタの当て方はこんな感じです。舞台前は場合によってハレーション部分を框に掛けたり、舞台下にこぼすこともあります。

ナナメ

ナナメ(ブッチ・ブチガイ)は一番外が手前、一番内側が伸びです。

当て方の指示は、「下手はちょい上振り。セットはきらってくだい。」「前は面(つら)まで、奥はホリ幕まで。」「伸びは袖幕の奥まで、手前は客席通路のあたりまで。」という感じでどの当たりまで当てて、どこをきらう(当てない)のかを伝えます。口で伝えにくかったら、照射範囲に物を置いて「ここからここまで」と指示するという方法もあります。

直し

フォーカスが思ったよりも大きかった、小さかった、色が生漏れしているなど、サスを降ろさないとできない直しは覚えておいてあとでまとめて降ろしてから直します。

一通り全部合わせたあと、作業灯を点灯します。袖にいる操作盤担当者に声を掛けて、サスを降ろしてもらいます。このとき、袖にあるSSなどの灯体がサスの下にある場合はどかしましょう。立ちおろしケーブルがあるときは、ケーブルに付きます。

操作盤でタッパの記憶ができないときは、目印などを見つけて目視で位置を測っておきます。立ちおろしケーブルに目印を付けておく、秒数で計測するという方法もあります。

適度な高さに降ろしてもらったら、不具合があった箇所を一つずつ直していきます。すべて直し終わったら、サスを上げてもらいます。タッパまで近くなったら、「間もなくです。」、決めたタッパになったら「はい。」で止めてもらいます。

直したところをもう一度点灯して調整し、全部終えたらサスのシュートは完了です。

3.フロントサイドライトのシュート

前明かりに回る人は、シーリングとフロントサイドの経路をホール・劇場スタッフに確認しましょう。

フロントサイドライトの基本的なベタ明かりの取り方は、片側3台もしくは4台の灯体をクロスさせて取ります。クロスで取ることで、まんべんなく当てることができます。ただし、片側3台の場合はクロスで取ってもどうしても当たらない部分ができてしまうしまうところがあるので、ある程度の妥協は必要です。

フロントサイドも基本的には上振り、下振り、首上げ、首下げで指示をします。照射範囲を「袖幕は1袖はきらい、2袖は掛けます。奥はホリ幕の下まで取ってください。」というように指示をすると伝わりやすいです。
ただし、当てている側は反対側の当たりが見えないため、細かい調整はプランナーが「客席側1台目をもうちょい首上げ」などと指示をしましょう。

ホールや劇場によっては、フロントサイドの角度や灯体の吊り位置によってクロスでは取れないところもありますので、そういうときはストレートで取ってみてください。また、セットや紗幕などがあれば当て方も変わってきます。

また、ホリ幕は絶対に当ててはいけないというわけではありません。後ろの方に並ぶのでどうしても顔が暗くなってしまう、シーリングの上の方が蹴られてしまって奥まで当たらないというような場合はホリ幕に当てることもあります。その場合は、照射面の上のラインを揃えておきましょう。

4.シーリングライトのシュート

シーリングのベタ明かりはストレートで均等に取ります。照射範囲は「袖幕きらい、奥はホリ幕の下場に少し掛かるくらいまで。」という感じで指示をします。
ただし、ホールや劇場によっては梁などの建造物によって明かりがストレートでは当てられないということも往々にしてありますので、そういうときはクロスで取るなどの対応をしてください。

シーリングもまた、ホリ幕に絶対当ててはいけないということはありません。奥まで顔を明るくしたいのであれば、多少ローホリの色が飛んでしまっても当てましょう。

5.フロア回りのシュート

前明かりのシュートが終わったら舞台に降りてきて、フロア回りのシュートに取り掛かります。フロア回りの置き位置は出演者の動線のじゃまにならず、袖幕や中割幕、大黒幕に当たらない位置に調整してから当たりを合わせます。

SSの取り方は演目によって変わりますが、今回は芝居の中のダンスで使うために仕込んでいます。
プランナーは、舞台センターに立って前後に動いて前と奥はどこまで当たるか、隙間はないかを見ながら指示をします。わからなければ、空いている人に動いてもらってもいいでしょう。

SSは上手と下手の両方を点灯すると合わせるときに光源が目に入って見にくい状態になります。パッチを上手と下手で分けている場合は、片側だけ点灯して合わせるようにしましょう。
分けていない場合は、手で反対側の光源を遮るとよいでしょう。

照射面は舞台前後だけでなく床に当てるか嫌うか、どこから床に落とすかも調整します。ポジショニングランプやナンバーが舞台面に置いてある場合は目安に使いましょう。

セット当てなど転換で灯体が移動する場合は、しっかりとオベタやスタンド、灯体の首を固定し、スタンドやオベタ、床の置き位置にそれぞれにバミリをします。

締めくくり

シュートの中で一番難しいのは、ベタ明かり(フラットな明かり)です。きちんと取れているように見えても、実際に明かりを作ってみたらおかしかった、暗い部分ができてしまったということもあります。
たとえシュートの時間がなくて妥協するところがあっても、最低限地明り、前明かり、フロントサイドのベタ明かりはしっかり取るようにしましょう。

シュートが終わったら、続いて明かりづくりに臨みます。

次のお話:ホールで初めて照明を使う人のための段取り【明かりづくり〜搬出】

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