舞台照明のプランニング力を磨くためにやっていること

照明プランを考えるということは、台本や演出、歌詞などの素材にある場所、時間、時代、背景など様々な要素を深く掘り下げていく行為です。
要素を掘り下げていくときに、参考文献や資料で背景などを調べていくだけでなく、自分の中にある引き出しからプランを考えていきます。

照明のプランニング力は引き出しの多さです。引き出しを多く持つためには日頃から意識して研鑽することが必要です。

そこで、Twitterで照明プランナーの方々に聞いてみました。

その結果数多くのリプライをいただいたので、まとめてみました。

他人の作る照明を観る

  1. 他人がやっている舞台、コンサートを観に行く。
  2. ライブを観に行ったりDVDを観る。
  3. YouTubeでライティングショーを観る。
  4. ライブハウスのオペレーターや乗り込みのオペレートを参考にしてシーンの引き出しを増やす。
  5. YouTubeで「かっこいい」を探して真似する。
  6. ジャンル外のステージやエンタメを楽しんで引き出しにする。
  7. 現地で入ったときに盗めるプランは盗む。

まずは他人が作る照明を観て学ぶことが大切です。「観る」というのは「観察する」ということです。

くらげ自身、ホール管理を中心に経験してきたので他人の照明を見る機会はこれまで何度もありましたが、案外見ているようで見ていないものです。
いざ明かりを作るときになって、全く今まで見てきたことが思い出せないのです。ただ漠然と観るのではなく、「なぜ、この色を使うのか」、「この機材はどうやって使うのか」というように意識して観察するようにしないと身に付きません。

また、他の人の作品を見ないままいきなりオリジナルのものを作ろうとしたり、基本もわからずに応用することはけっきょく遠回りになります。
Webなどのデザインを学ぶときにも、まずは人が作った作品を模写するところから始めます。照明も同じように、まずはいろいろな照明を観てデザインを真似してみるところから始めましょう。

ただし、他人の照明デザインに感銘は受けることがあっても引っ張られないようにしましょう。

自然を観る

  1. 春夏秋冬、都会から田舎の朝焼けから陽が沈み夜になる日常をよく観察する。
  2. 季節の花が美しく見える時間帯を探る。
  3. 太陽光がどんな反射と陰翳をつくるか、光が水とどんな絵をつくっているかを意識して眺める。
  4. 山に行って木洩れ日を観る。条件によっては自然ヘイザーも観ることができる。
  5. 人工や自然の構造物と光の当たる角度を観る。
  6. 美しい光景(景色、幼児の笑顔、草花など)に出会ったら、その美しさを目に焼き付ける。
  7. 日常の光を目と記憶で光をスケッチして、どんな光と影の成分(色、方向、コントラスト)がその情景を作っているのかを観察する。
  8. 日常の光を見てそのときの状況と自分の感情に敏感になる。

くらげは自然の光ほど参考になるものはないと思っています。ふと電車の窓を眺めるとき、家から駅まで歩いているときに自然の光が作る陰影に眼を奪われることがあります。
山を歩いているとき、カブに乗っているとき、ハッと自然の美しさに心を奪われることがあります。
そして、やっぱり自然の光の美しさには勝てないなと実感するのです。

自然の光の美しさには勝てないけど、観察しておいて真似することはできます。だから、日常にある自然の光や光景を意識して観察するように心がけてください。
照明プランを考えているとき、目に焼き付けた美しさやふと見た日常の光などが思い浮かぶ情景として、美しい舞台をつくる材料になるのです。

写真を学ぶ

  1. 。写真の勉強をしていると、光と影の成分(色、方向、コントラスト)を観る解像度が上がる。
  2. 色や光や考え方や見方について充実しているので写真の現像の本を読む。
  3. 一枚の写真で自分の伝えたい感動や景色を考え、構図や光の入り方、陰影など、魅せる方法を考える。

写真は意識して風景や光を観るためのツールです。構図を考え、光の角度や向きを考えて撮影します。
写真を撮り始めると、撮影の仕方だけでなく現像にもこだわるようになります。フィルムカメラからデジタルカメラになっても、現像ソフトを使って現像をします。

現像ソフトはAdobe photoshopやLightroomが有名ですが、各カメラメーカーから無料現像ソフトが出ていますので、一度使ってみることをおすすめします。

絵画を鑑賞する

  1. 陰影の付け方と表現・影にブルーで表現する事で深みを出すなど、舞台照明にも重なる所がある。
  2. オランダ絵画の黄金時代の作品全般は照明の参考になる。
  3. 現実にない光のことを考えるために、絵画をよく観に行く。

オランダ絵画とは

17世紀のオランダは絵画黄金時代とも言われています。

今まで絵画の買い手であった貴族や教会などといったパトロンからの大きな注文は減少し、代わって絵画の多くが市場で取引されるようになりました。中産階級の市民たちが絵の担い手となり、比較的小型の作品が多く描かれるようになります。
裕福な市民階層に絵画を購入してもらうためにそれまでの絵画の中心であった歴史画、宗教画、肖像画の他に、新たに風景画、風俗画や静物画という分野が展開されていきました。

多くの画家たちは、近代芸術市場での熾烈な競争に勝ち残るために、画家たちは自分の専門を極め、特定の主題を熟練した技巧で繰り返し描く様になっていきます。

オランダ黄金時代の巨匠たち

ヤーコプ・ファン・ロイスダール

ヤーコプ・ファン・ロイスダールは、風景画の巨匠です。
多作な風景画家であった彼は、600点以上の絵画を残していて、オランダの田園や田舎の風景、都市のパノラマや海景色を描いていて情感あふれる作風が特徴です。

レンブラント・ファン・レイン

レンブラント・ファン・レインは17世紀のオランダ美術全盛時代の画家で「光と影の魔術師」と呼ばれています。
スポットライトを当てたような強い光によるコントラストを用いることで光と影を使い分けて劇的な演出を施す構成と、登場人物の感情までも描き出す緻密な描写が特徴です。

ヨハネス・フェルメール

ヨハネス・フェルメールは「光の魔術師」「静謐な光の画家」と呼ばれる風俗画家で、写真のような作風が特徴です。
フェルメールの作品には、遠近法の1つ「消失点」、光の反射やハイライト部分などを点描によって表現する「ポワンティエ」、カメラのピンホール現象を利用した「カメラ・オブスクラ」という技法が使われています。
また、ラピスラズリという貴重な鉱石を削って作られる顔料が多く使われており、「フェルメール・ブルー」と呼ばれています。

オランダ絵画の作品展はしばしば国内でも美術展が開催されているので、一度は足を運んでみることをおすすめします。

イメージトレーニング

  1. 音楽を聴いたらキューの譜割りとイメージ色を浮かべて音から光に変換する
  2. 車での通勤中、曲を聴きながら「スタンバイ」「ゴー」を車内で叫ぶ

イメージトレーニングがパフォーマンスを向上させるというのは科学的に実証されています。
ただし、経験したことがないことを頭で繰り返すことはできません。

なので、他の人の照明を観て、どこで照明を変化させているのか、どんな明かりを作っているのかを観察したりすることが必要です。
「この明かりいいな」「この照明変化いいな」というのを自分の中に取り入れた上で、照明変化のキューをイメージトレーニングしていきます。

その意味では、他の人が作る照明を見る、自然を観察する、写真を学ぶ、絵画を鑑賞するというのもイメージトレーニングの一環なのかもしれません。

イメージトレーニングの方法は以下の通り。

  • 五感を意識する。
  • 主観的、客観的の両方でイメージする。
  • 大事なところはスローモーション再生と反復する。
  • 1日5分を継続する

引用:成功したいならイメージ力を磨け! ほんとうに効果のあるイメージトレーニング4つのポイント|STUDY HACKER

日頃からイメージトレーニングをしておくことで、より作りたい明かりに近づくことができます。

スタッフ間のコミュニケーション

  1. 人に付いて時間かけて勉強する。
  2. 演出家とよく話す。
  3. 現場で先輩方とコミュニケーションを取って技を聞き出す。
  4. 仕込みの人と一緒に作ることを忘れない。

現在活躍している名だたる照明デザイナーたちが大御所プランナーに師事をしてから独立したように、まずは他のプランナーの元で勉強して身に付けることもプランニング力を磨く上で欠かせません。

芝居であれば、深く掘り下げるためにも演出家とよく話し合うことが大切です。
そのときに、照明について詳しくない方の発想がプランを考える際のヒントになることもあります。

現場に出るときは、さまざまな経験をしているベテランのフリーの方や先輩が一緒になることもあります。
せっかくなので気になったことは積極的に聞いてみましょう。

また、照明プランはプランナー一人で作るものではありません。実際に現場に入って照明を作るときは、仕込み要員の方々の力を借りることになります。
自分だけでなく仕込み要員の方々と一緒に作り上げるという気持ちを忘れないようにしましょう。

分析する・記録を残す

  1. アーカイブとして仕込み図を残す。記録を残すことで後々役に立てる。
  2. 観劇の際に劇場HPから図面をDLして仕込み図を再現することで分析する

プランに行き詰まったとき、過去の仕込み図を読み返すとプランのヒントになるときがあります。
これは、自分の描いた仕込み図だけでなく、現場でもらった他の人が描いた仕込み図でも有効です。

人間の眼の仕組みを知る

  1. 反射光と透過光の見え方の違い。
  2. 色温度による彩度。
  3. 遠くのものを近くに見せる。
  4. カメラの絞りとシャッタースピードみたいなことを使って、空間をねじるためにはどうしたらいいのか。

光を捉えるのは、人間の眼です。光を観るために、まずは人間の眼の仕組みを知るというのは意外な盲点でした。
このあたりについて、機会があれば調べて記事にしてみようと思います。

デザイン筋を鍛えるための観察スケッチ

最後に、観察スケッチについてご紹介します。

近頃デザイナーの間で話題になっているのが、観察スケッチです。きっかけは、インテリアデザイナーのヤマシタ マサトシさんが投稿したnoteです。
デザインの筋トレ〜伝説の世界的デザイナーに教わった観察力を磨くとっておきの訓練法〜|note
有料ですが興味のある方はぜひ購入して読んでみてください。

また、こちらではさらにわかりやすく紹介しています。
只今流行中!デザインの筋トレ『観察スケッチ』でどこが鍛えられるの?|MdN DESIGN INTERACTIVE

観察スケッチのやり方は、1日に1個で良いから、何か1つのものをじっくりと観察してスケッチする。という方法です。
対象物はモノだけでなく、植物、風景など何でも構いません。

描くものはiPadとApple Pencilの完全デジタルでも、クロッキー帳やスケッチブック、コピー用紙、裏紙など何でも構いません。
ただし、ただ観察して描くだけではデッサンになってしまいます。観察スケッチは、物事の本質をとらえる力をつけるためのスケッチです。

対象物を触ったり、見る角度を変えたり、分解してみたりしながら五感をフルに活用して観察します。スケッチはうまくなくても構いません。
大事なのはその対象物からどれだけ情報を読み取れるかです。

観察力は習慣の積み重ねです。毎日少しづつ続けていくことが大切です。観察していくことで、観察力が身に付いていきます。いわば、デザイン筋を鍛えるための筋トレです。

実際にやってみた人たちの作例はこちらから見ることができます。
#観察スケッチ やってみた|Toggeter

締めくくり

今までプランニング力をどう磨くかについてはまったく考えてきていませんでしたが、今回改めて考えてみて、日常の観察力がどれだけ大切なのか実感することができました。

デザイン筋のトレーニングは積み重ねです。途中で挫折しても、問題ありません。また再開すればいいのです。
続けていった先に、目指す照明プランが見えてくるはずです。

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照明のプランニング力を磨くためにやっていること|Toggeter

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