名前は聞いたことがあるけど内容を知らない初心者のためのバレエ作品の紹介

バレエは、幼い頃に習っていたという方以外は、よくわからなくて馴染みが薄いと感じるほうが多いのではないでしょうか。

バレエにはいろいろな決まりごとや動きがあるし、様々なバレエ用語も出てくるので理解するのが難しく、敷居が高いと感じるのもうなずけます。
でも、バレエの魅力は言葉がなくても身体表現を通じて物語や感情を伝達できることです。多くの作品では、舞台を見ていれば、物語が理解できるように構成されています。

バレエ公演は、大きく分けると全幕公演とその他の形式(バレエコンサート、ガラ、トリプルビル、ダブルビルなど)に分かれます。全幕ものとは『くるみ割り人形』などストーリーのある作品を第一幕から最後まですべて上演する公演です。幕ものとも言います。

バレエ公演を観たことがあるという方でも、数多くあるバレエ作品の中で作品名は聞いたことはあるけど小品でしか見たことがないという作品もあることでしょう。
この記事では、バレエ作品の内容を詳しく知りたいという方のために、代表的な作品のストーリーを第一幕から最後まで詳細にご紹介します。

チャイコフスキー三大バレエ

数多くのクラシック・バレエ作品の中で、一番作品がよく知られているのは、『白鳥の湖』、『眠れる森の美女』、『くるみ割り人形』の三作品。この三作品はロシアの作曲家、チャイコフスキーが曲を手掛けていて、「三大バレエ」と呼ばれています。

白鳥の湖

チャイコフスキーの三大バレエの最初の作品です。物語は、ドイツの白鳥伝説に基づき、白鳥の姿に変えられた王女オデットと王子の真実の愛をテーマに展開されます。白鳥湖(はくちょうこ)と呼ばれることもあります。

第一幕 あるドイツの王国の中庭。王子ジークフリートの20歳の誕生日を祝って人々が踊っています。そこへ、王妃がやってきて息子である王子に、明日の舞踏会で花嫁を選ぶように伝えます。王妃が去ると、陽気な宴が再開されますが、王子一人だけがひとり物思いに耽っています。夕暮れが迫り、遠くに白鳥の群れが飛んでいるのを見た王子は、弓を片手に狩りへと出かけます。

第二幕 森の中の月明かりに照らされた、寂しい湖の畔。地上に降りた一羽の白鳥が、王子の目の前で美しい娘へと変わります。彼女の名はオデットといい、侍女たちと花摘みに来たところを悪魔ロットバルトによって白鳥の姿に変えられ、夜の間しか人間の姿に戻れなくなってしまったのでした。まだ誰にも恋をしたことがない若者が愛を誓ってくれれば呪いは解けますが、もしその誓いが破られれば永遠に白鳥のままでいなくてはなりません。それを聞いた王子はオデットへの愛を誓いますが、夜明けが近づくと悪魔ロットバルトが現れ、二人を引き離します。王子は愛するオデットを救おうと決意します。

第三幕 城の大広間です。舞踏会が開かれ、王子の花嫁候補たちが華々しく着飾りワルツを踊っていますが、オデットのことしか頭にない王子の心は動かされません。そこへ、貴族に扮した悪魔ロットバルトが、娘のオディールを伴って現れました。オディールの顔はオデットとそっくりで、彼女こそがオデットと信じた王子はオディールと踊りを共にするうちに妖しい美しさに魅了されて愛を誓ってしまいます。その瞬間、城の外に嘆き悲しむオデットの姿が見えました。悪魔ロットバルトは悪魔の姿に戻り、あざ笑いながら城を去ります。悪魔の計略にはまったジークフリートは、打ちひしがれながらオデットの後を追って湖へと向かいます。

第四幕 白鳥たちの待つ湖へと戻ったオデットは、永遠の誓いが破られたことを告げ、嘆き悲しみます。そこへジークフリートが現れて自分の過ちを悔い、許しを請いますが運命を変えることはできません。オデットは死を選び、その後を追うジークフリート。死をも恐れぬ二人の愛はロットバルトを滅ぼし、二人はあの世で永遠に結ばれます。

この作品のポイント
最大の見どころは第二幕、王子ジークフリートの眼前にオデットが登場し、やがて白鳥の群舞が繰り広げられる湖の場面です。神秘的な音楽とともにオデットが登場し、王子と出会います。そこから二人のゆっくりとしたデュエットが始まり、小さな4羽の白鳥の愛らしい踊りや大きな白鳥のダイナミックな踊り、そしてコール・ド・バレエ(群舞のバレエダンサーたち)の白鳥たちが神秘的な群舞を繰り広げます。

第三幕では、悪魔ロットバルトに連れられてオデットそっくりの姿をした娘のオディールが登場します。黒鳥の登場に先立って踊られる、各国の王女たちの踊りや、スペイン、ハンガリー、イタリア、ポーランドなどのキャラクターダンスが華やかさを盛り上げ、そのクライマックスでオディールと王子の「黒鳥のパ・ド・ドゥ」が踊られます。白鳥オデットと黒鳥オディールは一人のダンサーが踊るため、清純と妖艶の演じ分けも注目です。

同じ作品でも、結末違い、解釈違い、設定違いが非常に多いところも面白いところかと思います。第四幕で、ロットバルトとの闘いに王子が勝利し、「この世」でオデットと結ばれて他の娘たちも人間に戻るという結末や、オディールがオデットに成りすますのではなく、別人として王子を誘惑するという解釈、第三幕のスペインの人々が丸々ロットバルトの手下だったりする設定もあります。

くるみ割り人形

クリスマスの時期になると各国で上演され、大人ばかりでなく子供にも夢を与えている作品です。この作品は、ドイツの作家ホフマンの原作をアレクサンドル・デュマ・ペールが『くるみ割り人形とネズミの王様』という題の童話に書き直したもので、バレエの台本はマリウス・プティパ、音楽をチャイコフスキーが付けました。略して「くるみ」と呼ばれます。

第一幕 クリスマスイヴの夜、クララの家ではパーティが開かれていて、お客が子どもたちへのプレゼントを持って次々に訪れています。子どもたちはおもちゃのプレゼントに大喜び。そこに、ドロッセルマイヤーおじさんがやってきました。ドロッセルマイヤーは機械じかけの人形で子どもたちを楽しませ、クララにはくるみ割り人形をプレゼントしてくれました。くるみ割り⼈形は、他の⼦供たちにとっては不恰好なものでしたが、クララは⼤変気に⼊りました。クララはくるみ割り人形を抱いて踊りだしますが、それを見ていた兄のフリッツが人形を奪おうとして壊してしまいます。クララが悲しんでいると、ドロッセルマイヤーが人形を直してくれて、ようやくクララは泣き止みます。

パーティが終わって客人たちは帰宅します。クララとフリッツもおもちゃや⼈形を客に残して眠りにつきます。みんなが寝静まった深夜。クララは置いてきてしまったくるみ割り⼈形が気になって客間へ戻って来ます。するとどこからか現れたドロッセルマイヤーが魔法をかけ(クララには⾒えていないバージョンや、そもそもドロッセルマイヤーが登場しない場合もあります)、客間のクリスマスツリーはみるみると⼤きくなり、身体の小さくなったクララはねずみたちに襲われそうになります。すると、くるみ割り⼈形率いるおもちゃが登場し、ねずみ軍団との戦争が始まります。
ネズミの王様がくるみ割り人形に襲いかかろうとした瞬間、クララはスリッパ(多くの場合はトゥシューズを使います)を投げて危機を救います。人形は美しい王子に変身し、お礼にとクララをお菓子の国に招待します。気づくと辺り一面は銀世界。二人は雪の精たちが舞う雪の国を抜けて、お菓子の国を目指します。

第二幕 クララと王子はお菓子の国に到着。二人のために様々な踊りが繰り広げられます。楽しい時間はあっという間に過ぎていき、クララは大広間のツリーの下(自分の部屋の場合もある)で目を覚ますと、くるみ割り人形をしっかり抱きしめるのでした。

この作品のポイント
第一幕が演劇的なのに対し、第二幕は多彩な舞踊シーンが楽しめる構成になっています。第一部では、前半のパーティの楽しい場面から人形やネズミたちが闘いを繰り広げる場面への転換が見どころになっています。続く雪の世界は、真っ白なチュチュを身に着けた雪の精たちの群舞が幻想的です。第二幕の様々な舞踊ではカラフルな衣装や美術に彩られた各国の楽しい踊りが見ものです。
クララが⾦平糖のGPDDを踊る場合や、2幕の各国(お菓子)の踊りにクララも参加したり、王⼦がドロッセルマイヤーの甥、という設定があったり、王⼦がくるみ割り⼈形に姿を変えられてしまうプロローグがあったり、と様々なバージョンがあります。また、クララという役名にドイツ系の 「マリー」やロシア系の「マーシャ」を使う場合もあります。 

眠れる森の美女

ペローの童話をもとに、呪いをかけられ100年の眠りについたオーロラ姫が王子の接吻によって目覚める物語です。1890年に上演されたこの作品は、19世紀末に帝政ロシアの劇場総裁だったフセヴォロジスキーの采配のもと、チャイコフスキーとフランスの振付師マリウス・プティパがすべての能力を出し切っていて、クラシック・バレエの最高峰と呼ばれています。略して「眠り」と呼ばれます。

プロローグ フロレスタン王の宮廷に待望の子供が生まれ、オーロラ姫の洗礼式が開かれています。招かれた6人の精霊たちがそれぞれ、鷹揚、勇気、優しさ、などと⾔った資質的な贈り物を授けていきます。そこへ突然雷鳴がとどろき、式典⻑カタラビュットの⼿違いにより、招待されなかったことに腹を⽴てた悪の妖精カラボスが、手下を従えて現れます。カラボスは自分だけが招かれなかったことを怒り、オーロラ姫が16歳になる誕生日に、糸紡ぎの針に指を刺されて死んでしまうだろうと、呪いをかけます。そこへ、まだ贈り物をしていなかったリラの精が進み出て、「姫は死ぬことはなく、100年後の眠りのあとに美しい王子の接吻によって目覚めるでしょう」 と呪いを和らげます。それがリラにできる精一杯の贈り物です。呪いを恐れた国王は、国中の紡ぎ針の使用を禁止します。

第一幕 オーロラ姫の16歳の誕生日。村人たちが花環を手にお祝いのワルツを踊っています。4人の王子が姫に求婚するために訪れ、華やかな宴が始まります。姫は見慣れぬ老婆に花束を差し出されると、素直に花束を受け取ります。しかし、この老婆は実はカラボスが変身した姿。オーロラ姫は花束に仕掛けてあった紡ぎ針で指を刺し、倒れてしまいます。悲しむ国王の前に、再び現れたリラの精は、魔法の杖で城と人々を眠りにつかせます。城の周囲には茨が茂り続け、城全体を包み込んでいきました。

第二幕 100年後。オーロラの眠る森にデジレ王子が従者を連れて狩りに訪れます。独りになった王子のもとにリラの精が現れ、オーロラ姫の幻影を見せます。恋に落ちた王子は助けるために城へと向かい、リラの精の助けを借りてカラボスたちを撃退。ついに姫の眠る部屋へとたどり着くと、オーロラ姫にそっと口づけをします。すると姫と城の人々が目を覚まし、元の姿を取り戻すのでした。

第三幕 オーロラ姫とデジレ王子の結婚式。宝石の精やおとぎ話の主人公たちが駆けつけて祝福の踊りを披露します。祝宴のクライマックスは、オーロラ姫とデジレ王子の華やかな踊り。すべての登場人物の祝福の中で、大団円を迎えます。

この作品のポイント
設定は架空の王国とされていますが、17世紀と18世紀のフランス宮廷が舞台。オーロラ姫が目覚める100年後の世界は最も華やかだったルイ14世の時代となっていて、舞台装置は豪華絢爛を絵にしたような華やかなものとなっています。
チャイコフスキーもまた作曲には力を入れていて、フランスの17世紀の宮廷音楽や18世紀のオペラを参考に大掛かりな組曲に仕上げました。その結果、上演時間は3時間という超大作になっています。

ロマンティック・バレエ

ロマンティック・バレエは1830年から70年頃のフランスで盛んに上演された、文学、音楽、美術のロマン主義に刺激を受けて生みだされたバレエ形式の総称です。非現実の世界を舞台に、『ラ・シルフィード』や『ジゼル』のように、人間と妖精の結ばれない恋をテーマにしたものや、『海賊』や『パキータ』など異国を舞台に冒険が繰り広げられる作品が多く生まれています。

ジゼル

ロマンティック・バレエの代名詞とも言える作品です。パリ・オペラ座で1841年に上演されたあと、ロシアでは断続的に上演され続け、マリウス・プティパによって幾度にも渡る大幅な改訂演出・振り付けが行われました。この形が元になって現代に継承されていると考えられています。

第一幕 ドイツのライン渓谷にある村に住む、踊りが好きだけど心臓が弱い村娘ジゼル。貴族アルブレヒト公は、身分を隠して村人のふりをして、ジゼルとの恋を楽しんでいます。一方、ジゼルに心を寄せる森番ヒラリオンは、自分の思いをジゼルに打ち明けますが冷たくあしらわれてしまいます。そんな折、ヒラリオンはロイスが実はアルブレヒトの変装であることに気付いてしまいます。 

ぶどうの収穫祭の最中でジゼルは収穫祭の女王に選ばれ、村人たちとともに踊りを楽しみます。そこへ、ジゼルの母であるベルタが現れ、身体の弱い娘の身を案じて「結婚前に死んだ乙女たちはウィリとなって道行く男を捕らえ、死ぬまで踊らせる」という伝説を話します。領主クールランド公が娘のバチルド姫とともに、村を訪れます。ヒラリオンがアルブレヒトの身分を暴き、バチルド姫がアルブレヒトの婚約者と判明すると、ジゼルは恋人の裏切りを知ります。絶望のあまり正気を失ったジゼルは、錯乱のあまり心臓が悪いのも忘れて走り回り、アルブレヒトの腕の中でこと切れるのです。

第二幕 未婚のまま死んだ乙女の精、ウィリ(妖精)の女王、ミルタが支配する深い森の墓場です。ジゼルの墓を訪れたヒラリオンは、妖しい光を放つウィリの気配に怯えて逃げ出します。木立の間から、ウィリの女王ミルタが登場し新しい仲間となるジゼルを迎え入れます。そこへ、悲しみにあふれるアルブレヒトがやってきてジゼルの墓に花を捧げると、目の前にジゼルが登場。二人は一緒に踊ります。一方、ウィリたちに捕まったヒラリオンは、踊らされた末に沼へ突き落とされてしまいます。ウィリたちは次にアルブレヒトの命を狙います。ジゼルは彼を守ろうとしますが、ミルタには逆らえません。踊り続けたアルブレヒトは力尽きて倒れてしまいますが、あわやというところで夜明けが訪れてウィリたちは消え、ジゼルも墓へと戻り、アルブレヒトはその場に取り残されるのでした。

この作品のポイント
第一幕は人間界、第二幕が精霊の世界と、ロマンティック・バレエの典型的なパターンで作られています。第一幕の見せ場は、ジゼルが錯乱し、やがて死に至る「狂乱(錯乱)の場」でのドラマティックな演技です。第二幕では、精霊となったジゼルは重力を感じさせない跳躍や浮遊感で観客たちを別世界へと誘います。

ラ・シルフィード

スコットランドを舞台に、妖精シルフィードと青年の結ばれない恋を描いた物語です。19世紀ロマンティック・バレエの始まりとされています。1832年の初演では、シルフィードを踊ったマリー・タリオーニによるまるで重力がないかのようにつま先で踊るポワント技法、白いモスリンの軽やかなロマンティック・チュチュ、ガス灯の青白い照明など、ロマンティック・バレエの先駆けとなる作品となりました。

第一幕 スコットランドのとある農家。村娘エフィとの結婚式の朝、暖炉脇でまどろむ若い農夫ジェームズの前に、彼に恋した空気の精シルフィードが現れます。シルフィードは彼の頬にそっと口づけをしますが、彼が目を覚ますと消えてしまいます。そこへ、ジェームズの母親と友人たちともにエフィーがやってきます。ジェームズの友人ガーンもエフィーに心を寄せていますが、彼女の目にはジェームズしか映っていません。そこへ、暖炉から魔法使いの醜い姿をしたマッジが現れます。手相を見て、エフィーとジェームズは結ばれず、彼女と結ばれるのはガーンであると告げます。怒ったジェームズはマッジを家から追い出します。

結婚式が始まり、ジェームズがエフィーに結婚指輪を渡そうとしたそのとき、シルフィードが入ってきてジェームズの結婚指輪を奪って逃げていきます。ジェームズはシルフィードを追って家を飛び出していきます。絶望して悲嘆に暮れるエフィーにガーンが求婚するのでした。

第二幕 霧深い森の中、魔女のマッジがジェームズに復讐するため、ヴェールに毒を染み込ませています。ジェームズが森にやってきて、シルフィードをとらえようとしますが、つかまえようとするジェームズの腕の間を巧みにすり抜けていきます。ジェームズの目の前に現れたマッジはヴェールを渡し、これで包めば彼女は永遠のものになると教えます。すると、スカーフに魅せられたシルフィードがジェームズを追いかけてきました。ジェームズが隙を見てシルフィードをヴェールで包み込んだ瞬間、彼女の背中の羽が抜け落ち、ジェームズの腕の中で息絶えてしまいます。呆然とするジェームズの前にマッジが現れ、指を指した森の先にはエフィーとガーンが腕を組み、結婚式へと向かう姿がありました。すべてを失ったジェームズは、その場で崩れ落ちます。

この作品のポイント
ロマンティック・バレエのスタイルであるマイムによって物語が自然に進行していくのが特徴です。中でも最大の見どころは、空気の精シルフィードの重力を感じさせない軽やかさにあります。シルフィードは目には見えるけど実体がないため、いくらジェームズが手を伸ばしてもすり抜けてしまいます。ジェームズの抱きたいけど抱けないジレンマが森の中でのジェームズとシルフィードのパ・ド・ドゥのテーマになっています。
注意
『ラ・シルフィード』とよく似た作品名に『レ・シルフィード』があります。この2つの作品は名前こそ似ていますが、全く別の作品です。『レ・シルフィード』とは『ラ・シルフィード』の複数形で『空気の妖精たち』という意味です。『レ・シルフィード』は1900年代にバレエ・リュスのミハイル・フォーキンによって作られた作品で、ショパンのピアノ曲集に振り付けられたことから、ロシアでは『ショパニアーナ』と呼ばれています。月光の下で踊る詩人と空気の精シルフィードをモチーフとしていますが、ストーリーはありません。

コッペリア

フランス・バレエのロマンティック期の最期を飾った作品です。物語の原作は、ドイツの幻想怪奇作家ホフマンの『砂男』ですが、この短編小説のものはバレエ『コッペリア』とはかなり趣を異にしています。バレエの筋書きは、得体の知れない科学的実験に没頭するコッペリア博士と、恋人がいるにも関わらず人形に夢中になるという登場人物を登場させ、バレエに相応しくコミカルなタッチに仕上げたものとなっています。
このバレエ作品には、19世紀の欧州における時代背景が色濃く現れていて、一つは科学的なものへ好奇心と不信感、2つめは19世紀特有の異国趣味です。そういった時代背景が象徴されているのです。

第一幕 ポーランドガルシア地方の小さな村。コッペリウスの住む家の二階には、毎日本を読む美しい少女コッペリアの姿が見えます。人形のコッペリアを人間だと思い込んだ青年フランツは盛んに愛嬌を振りまきますが、その様子を見た恋人のスワニルダはご機嫌斜めです。そこへ村長がやってきて、明日、領主が新しい鐘を寄贈するのでお祝いの宴が開かれることを告げます。その時結婚する娘には、領主から持参金が送られるというのです。若者たちが喜ぶなか、スワニルダはどこか浮かぬ顔です。

その夜、外出したコッペリウスは広場で家の鍵を落としてしまいます。その鍵を拾うスワニルダ。恋敵コッペリアが気になるスワニルダは友人たちとコッペリウスの家に忍び込むことにしました。

第二幕 コッペリウスの仕事場。スワニルダたちが中へ入ると、薄暗い中に、いろいろな人形や道具が見えます。カーテンの影に隠されていたコッペリアも実は人形だったとわかり安心するスワニルダ。安心したスワニルダたちは人形を動かして遊び始めます。そこへ、コッペリウスが帰宅。仕事場が荒らされているのを見てものすごい剣幕で怒り、娘たちを追い出します。
一人逃げ遅れたスワニルダがカーテンの影に身を隠していると、今度はフランツがバルコニーから忍び込んできました。コッペリウスはフランツの魂を抜いてコッペリアに命を吹き込もうと思いつき、彼を眠らせます。この様子を見ていたスワニルダはコッペリアになりすまし、コッペリウスの呪文に合わせて魔法の力で動き出したふりをして、コッペリウスをさんざんからかった末に、フランツを起こして逃げ出します。

第三幕 広場では新しい鐘が披露され、鐘の祭りが開催されます。仲直りしたスワニルダとフランツも、この日晴れて結婚することになりました。そこへ、怒ったコッペリウスが現れて一同に事の次第を訴えますが、事情を聞いた領主からお金をもらうと機嫌を直します。広場では、スワニルダとフランツの結婚式を迎え、鐘が告げる時間をテーマにした踊りが繰り広げられ、最後はスワニルダとフランツによる平和の踊りで幕を閉じます。

この作品のポイント
見どころは、スワニルダが人形になりすますシーンです。コッペリアの動きを真似て目をパチパチ動かしたり、両手両足を機械じかけのように動かす様子がコミカルです。第三幕での群舞(ディベルティスマン)では、ポーランドの⺠族的な衣装と振り付けで構成されていて、踊りや衣装がとても鮮やかです。
また、1幕のフランツとスワニルダが踊る「⻨の穂のパ・ド・ドゥ」も有名です。⻨の穂を使って
⼆⼈の恋の成就を占う踊りです。スワニルダには聞こえる⾳が、フランツには聞こえず、⼆⼈の恋を否定されたように感じたスワニルダは機嫌を損ねてしまう、というシーンです。⼤変かわいらしいこのシーンは、⾒所として挙げられることが多いです。
コッペリアが最終的に本当に人間になる演出や、バラバラになったコッペリアが残され、コッペリウスが呆然とする中、幕が降りる演出もあります。 

異国情緒あふれるバレエ

クラシック・バレエとは一味違う、東洋を舞台にした異国的なニュアンスを強調している作品です。アラベスク文様を施した美術や、おへそ出しパンツを履いたセパレートの衣装や、ゆったりとしたシルエットで、裾口で絞ったくるぶし程度の丈のハーレムパンツなどの衣装が使われているのが特徴です。

ラ・バヤデール

古典バレエの傑作を次々に生み出していくロシアの振付師、マリウス・プティパの初期の代表作です。バヤデールとは、寺院の舞姫の意で、古代インドを舞台に舞姫ニキヤと戦士ソロルの悲恋を描いた物語です。
プティパの死後、何度か台本の改訂が行われており、元は五幕まであったものが三幕構成に変更され、さまざまな踊りが追加されていて、二十世紀後半以降、世界中で人気が高まっています。

第一幕・一場 インドの寺院前。狩りから戻った戦士たちが集まっています。その中のひとり、ソロルは狩りに行く途中に、愛する舞姫ニキヤの待つ寺院に立ち寄ります。神殿では聖なる火の儀式が始まり、ニキヤが登場。ニキヤの美しさに魅了された大僧正はニキヤに言い寄りますが、ソロルを愛しているニキヤはきっぱりと断ります。ソロルが会いに来ていることを下僕がニキヤに耳打ちすると、大僧正を振り切りソロルの待つ庭に駆けつけます。ソロルは聖なる火に向かい、ニキヤへの変わらぬ愛を誓います。二人の会話を盗み聞きしていた大僧正は嫉妬に駆られ復讐に燃えるのでした。

第一幕・二場 ソロルが仕えるラジャ(太守)の宮殿。ラジャはソロルから贈られた虎が大変気に入り、娘のガムザッティとの結婚を取り決めます。ソロルはガムザッティの美しさに魅了され、結婚を承諾してしまいます。ガムザッティとソロルの結婚を知った大僧正は、太守にソロルとニキヤの関係を密告します。二人の話を盗み聞きしたガムザッティは、ニキヤを自分の元へと呼び寄せます。二人は激しく対立し、ガムザッティは恋敵であるニキヤを亡き者にしようと企てるのです。

第二幕 ガムザッティとソロルの婚約式。太守の中庭では二人の婚約式が執り行われ、盛大な宴が開催されています。ニキヤは祝いの舞を踊りますが、 悲しみをこらえることができません。踊りの途中でガムザッティの侍女にソロルからと花かごを渡されますが、花かごの中には毒蛇が仕込んであり、花かごを受け取った瞬間に噛まれてニキヤは倒れてしまいます。下僕が蛇を殺しますが、毒はすでにニキヤの身体を巡っていて、苦しむニキヤの前に大僧正が駆け寄り、自分のものになるならと解毒剤を差し出しますが、それを拒んで息絶えます。

第三幕・第一場 影の王国。ソロルはニキヤの死に罪悪感を感じ、アヘンを吸って幻想の世界に逃避しようとします。夢の中で、バヤデールたちの精霊が現れて乱舞しています。その中にニキヤを見つけたソロルは、ニキヤに許しを乞います。

第三幕・第二場 ガムザッティとソロルの結婚式。黄金の仏像が登場し、舞姫たちが踊る華やかな結婚式が始まります。祝宴の最中、ソロルとガムザッティと前にニキヤの幻影が現れますが、その姿はソロルにしか見えません。大僧正が祭壇に上がり、式を執り行なおうとした瞬間、雷鳴がとどろき、神殿が崩れ落ちます。そこにいた人々は瓦礫の下に埋もれますが、ニキヤとソロルは天上で再会を果たし、永遠の愛で結ばれます。

この作品で有名なシーンは、影の王国で白いチュチュを身に着けたダンサーたちがアラベスク・パンシェ(上半身を倒して足を自分の後ろへ上げる動き)とカンブレ(その上げた足を下ろして後ろに反る動き)を繰り返しながらゆっくりと舞台奥の小高い丘から一人ずつ列をなして降りてきて舞台いっぱいに広がるバレエ・ブランのシーンです。実際にはニキヤにしてしまった⾃⾝の仕打ちに対し、自責の念を抱えたソロルが、逃避のために阿⽚を吸って、⾒る夢の世界ですが、この影の王国のシーンは時間の永遠を表しています。ラストでの幻影となったニキヤとソロルが白い長いスカーフを両端を持って踊るパ・ド・ドゥも神秘的です。

ライモンダ

ロシアの古典バレエの巨匠であるマリウス・プティパによる最後の大作です。チャイコフスキーの後継者と目されたアレクサンドル・グラズノフが作曲した音楽の優美さはこの作品の魅力の一つになっています。中世を舞台に、美しい令嬢ライモンダをめぐり東西の騎士が闘うラブロマンスです。

第一幕 13世紀、フランスのプロヴァンス地方。シビル・ド・ドリス伯爵夫人の居城では、姪のライモンダの誕生日の宴が開かれています。そこへ婚約者である騎士ジャン・ド・ブリエンヌからの手紙が届きます。ジャンはハンガリー王アンドレア二世のもとで十字軍の遠征に出ていましたが、勝利を収めて明日ライモンダの元へ帰ってくるとのこと。そこへ美しいライモンダの噂を聞きつけたサラセンの騎士アブデラフマンが訪れます。彼はライモンダの心をつかもうと数々の財宝を捧げますが、彼女は拒絶します。
夜が更け、一人になったライモンダがまどろんでいると、城の守り神である「白い貴婦人」が現れ、ライモンダを庭へと導きます。付き従う彼女の前にジャン・ド・ブリエンヌの幻が現れて二人は踊りますが、いつのまにかジャンは消えてしまいます。そこへ突然彼女の前にアブデラフマンが現れ、愛を告白しライモンダは目を覚まします。

第二幕 宮殿内の広間。ジャンの帰還を祝う宴の準備が進められているところへラッパの音が鳴り響き、アブデラフマンが多数の家臣を引き連れて乗り込んできます。おびえるライモンダの前でアブデラフマンは自分の支配下であるアラビア、サラセン、スペインなどの各国の踊りを披露し、自身の力を誇示します。踊りが最高潮に達し、アブデラフマンがライモンダを連れ去ろうとしたとき、ジャンが帰還します。ジャンはライモンダを救い出し、十字軍の騎士とともにアブデラフマンに戦いを挑みますが、アンドレア二世に止められます。王はジャンとアブデラフマンに対し騎士らしく決闘で決着をつけるよう命じます。
ジャンは決闘に勝ち、アブデラフマンは傷つき倒れます。決闘に勝利したジャンは改めてライモンダに求婚し、王と伯爵夫人が二人を祝福します。

第三幕 ハンガリーのジャンの城。彼とライモンダの結婚式が盛大に執り行われています。アンドレア二世とドリ伯爵夫人も列席し、客たちによるマズルカやチャルダッシュが踊られ、多くの人々の祝福を受けています。式の最後にはライモンダとジャンが友人たちと踊るハンガリー風のグラン・パで華々しく幕を閉じます。

この作品のポイント
この作品の特徴は、民族舞踊と民族音楽、クラシック舞踊とクラシック音楽の自然な融合です。第三幕のライモンダとジャンのグラン・パ・ド・ドゥはこの作品の最大の見せ場であり、自然な融合を感じることができます。

海賊

原作はイギリスの詩人ジョージ・ゴードン・バイロンの詩劇『海賊』ですが、バレエ化するにあたり内容は大幅に変更され、登場人物の名前を残すのみとなっています。また、振り付け演出の面でも1873年のロンドン初演以来さまざまな改訂が行われ、現在上演されているものはマリウス・プティパの振り付けを元にしたものとなっています。
跳躍的な音楽に乗せて軽快に物語が進行していき、次々に踊りが続きます。

プロローグ 海賊の首領コンラッドと手下のビルバンド、奴隷のアリたちを乗せた帆船が嵐に遭遇し、難破してしまいます。

第一幕 ギリシャの浜辺。打ち上げられて倒れている3人を、若い娘たちが見つけて介抱します。目を覚ましたコンラッドは娘のひとりメドーラに心惹かれ、コンラッドもまたメドーラに好意を抱きます。コンラッドは彼女たちに感謝するとともに、自分たちが海賊であることを打ち明けます。そこへ奴隷商人ランケデムがトルコ軍を率いてやってきて、メドーラと娘たちをさらっていきます。

奴隷市場ではランケデムが金持ち相手に奴隷たちを競売にかけています。自分のハーレムに侍らせる美女を求めて市場にやってきたトルコ総督のセイード・パシャは、メドーラの親友ギュリナーラを買い取ります。次にメドーラの美しさに目がくらんだ総督はどうしても競り落とそうとします。そのとき、高貴な商人に変装したコンラッドが現れ、メドーラに一番の高値を付けます。コンラッドは、ランケデムを捕らえてメドーラや娘たちを奪い返し、海へと逃げ去ります。

第二幕 海賊たちの洞窟。コンラッドたちは連れ帰った娘たちと祝宴を開いています。救い出した娘たちに、自分たちの生まれ故郷に帰りたいと訴えられたコンラッドは願いを聞き入れようとしますが、仲間のビルバンドたちに反対されます。彼らの反対を押し切って、コンラッドは娘たちを解放。囚われの身であるランケデムはコンラッドに復讐するよう仲間たちにけしかけます。ランケデムは眠り薬をふりかけたバラの花束をメドーラに渡し、知らずにメドーラから花束を渡されたコンラッドは眠り込んでしまいます。そのすきにメドーラは再びさらわれてしまいます。

第三幕 パシャのハーレム。メドーラはギュリナーラとの再会を喜びます。まどろんだパシャは花園の中で美女たちが華やかに舞い踊る夢を見ます。そこへ巡礼を装ったコンラッドたちが潜入し、すきを見てメドーラを救い出します。

エピローグ コンラッド、メドーラ、ギュリナーラ、アリを乗せた船は新たな冒険に向けて大海原へ漕ぎ出していきます。

この作品のポイント
第二幕のコンラッド、メドーラ、アリの女一人男二人という構成で踊られるグラン・パ・ド・トロワはドン・キホーテと並んで人気の演目です。多くの高い跳躍や複雑な回転技などのテクニック見せる、エキゾチックでセクシーなアリの踊りが、観客を魅了します。⼩品として抜粋される場合、メドーラとアリのパ・ド・ドゥとして、2⼈で演じられることが多いです。 

ドン・キホーテ

7世紀のスペインの作家、ミゲル・デ・セルバンテス・サベードラの『奇想天外の騎士ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャ』という長編小説をもとに作られた作品です。祝祭的バレエの典型で、日本では「ドンキ」と略されて呼ばれています。1768年からパリ・オペラ座などで上演されていましたが、現在のドン・キホーテの形は、1869年にマリウス・プティパがモスクワの帝室劇場(現ボリショイ劇場)からの依頼で、プロローグ付き四幕八場からなる作品として初演したものを基本に、その後ゴルスキーによって、演劇的な演出(シンメトリーを崩す、舞台上の踊っていない出演者に芝居をつける、など)がなされたものを基にしています。

プロローグ ドン・キホーテの書斎。愛読している騎士道物語に夢中になったドン・キホーテは、空想と現実の区別がつかなくなってしまいます。ドン・キホーテはまだ見ぬ夢の姫、ドルネシア姫ドルシネア姫を探しに老馬ロシナンテにまたがり、農夫のサンチョ・パンサを連れて旅立ちます。

第一幕 バルセロナの広場。街の人々が集まって賑わっています。宿屋の娘キトリは町の人気者。群衆の中から恋人のバジルが現れると、愛嬌を振りまいて踊ります。キトリの父親ロレンツォは彼をよく思わず、金持ちの貴族ガマーシュと結婚させたがっています。エスパーダに連れられた闘牛士の一団が登場し、町の踊り子とともに華麗な舞を披露します。そこへ、ドン・キホーテが、サンチョ・パンサを連れてやってきます。ドン・キホーテは、ロレンツォの宿屋を城だと思い込み、家来にしてほしいと頼み込みます。さらにキトリをドルシネア姫と思い込み、うやうやしく手を取ってメヌエットを踊ります。その間に、宿屋の食料を盗み食いしたことがばれたサンチョ・パンサが逃げ出してきて、広場は大混乱。そのすきに、キトリとバジルは広場から逃げ出します。

MEMO
野営地と居酒屋は、演出によって順番が異なります。どちらの順番もあり得ますが、日本でメジャーなのは先に野営地が来るバージョンだと思います。

第二幕・第一場 居酒屋。駆け落ちしたバジルとキトリがやってきます。そこへ、彼らを追ってロレンツォ、ガマーシュ、さらにはドルシネア姫がさらわれたと勘違いしたドン・キホーテが登場。ガマーシュとの結婚を迫るロレンツォ。バジルは「キトリと結婚できないことに絶望した」と自殺を企てます。キトリはこれが狂言であることを察し、倒れたバジルにすがりつき、結婚の許可を求め懇願します。それでもロレンツォは認めようとしませんでしたが、ドン・キホーテの執り成しでしぶしぶ認めます。その瞬間、バジルは飛び起き、自殺は狂言だったことが分かりますが、時はすでに遅し。二人は結婚を誓います。

第二幕・第二場 ジプシーの野営地。ジプシーたちが野営しているところに、ドン・キホーテが通りかかります。
ジプシーたちが演じる人形芝居で姫が悪漢に襲われているのを見たドン・キホーテはまたも虚実の境を見失って激昂し、芝居小屋に突進していきます。さらに、回る風車見たドン・キホーテは姫を襲ったおそろしい怪物だと思いこみ、挑みかかりますが、跳ね飛ばされて気を失います。

第二幕・第三場 夢の場面。ドン・キホーテは、夢の中で姫ドルシネア姫(キトリの二役)、妖精の女王やキューピッドたちと踊るのを見ます。やがて目覚めたドン・キホーテは、通りがかりの公爵一行に助けられ、城館に同行します。

第三幕 その頃、公爵の館では晴れて結ばれたキトリとバジルの結婚式が執り行われています。二人の結婚を見届けたドン・キホーテは老馬にまたがり、サンチョ・パンサを引き連れて新たな冒険へと旅立ちます。

この作品のポイント
演劇的要素の強い作品ですが、最初から最後まで息もつかせず、底抜けに明るく楽しい踊りが続きます。見どころは、最後のキトリとバジルによるグラン・パ・ド・ドゥです。バレエ・コンサート等でもよく踊られていて、回転やバランスの高度なテクニックを存分に見せてくれます。
たくさんの陽気な踊りと、そこに挿入される幻想的な夢の場とのコントラストも見どころの一つです。
演出によっては、場面の順序が入れ替わり、ジプシーの野営地が居酒屋より先に来るものやキトリとバジルの結婚式を迎える前に、ドン・キホーテと銀月の騎士(騎士の紛争をしたバジル)との決闘が行われ、勝った銀月の騎士が晴れてドルシネア姫(キトリ)に結婚を申し込むもの、ガマーシュとドン・キホーテの決闘が結婚式前に行われるなどの演出が入ることもあります。

ドン・キホーテ 別バージョン

【先に野営地のバージョンだと…】
第二幕・第一場 ジプシーたちの野営地に駆け落ちした二人がやってきます。二人を追ってロレンツォ、ガマーシュ、さらにはドン・キホーテとサンチョパンサも現れます。
ジプシーたちが演じる人形芝居で姫が悪漢に襲われているのを見たドン・キホーテはまたも虚実の境を見失って激昂し、芝居小屋に突進していきます。さらに、回る風車見たドン・キホーテは姫を襲った悪感おそろしい怪物だと思いこみ、挑みかかりますが、跳ね飛ばされて気を失います。

第二幕・第一場 夢の場面。ドン・キホーテは、夢の中でドルシネア姫(キトリの二役)、妖精の女王やキューピッドたちと踊るのを見ます。やがて目覚めたドン・キホーテの元へ、キトリたちを探しているロレンツォとガマーシュがやってきます。サンチョパンサが居酒屋へ逃げたことを教えてしまったため、ロレンツォたちは逃亡先の居酒屋へと向かいます。

第二幕・第三場 居酒屋。駆け落ちしたバジルとキトリがやってきます。そこへ、彼らを追ってロレンツォ、ガマーシュ、さらにはドルシネア姫がさらわれたと勘違いしたドン・キホーテが登場。ガマーシュとの結婚を迫るロレンツォ。バジルは「キトリと結婚できないことに絶望した」と自殺を企てます。キトリはこれが狂言であることを察し、倒れたバジルにすがりつき、結婚の許可を求め懇願します。それでもロレンツォは認めようとしませんでしたが、ドン・キホーテの執り成しでしぶしぶ認めます。その瞬間、バジルは飛び起き、自殺は狂言だったことが分かりますが、時はすでに遅し。二人は結婚を誓います。

締めくくり

バレエはルネサンス期のイタリアで生まれ、フランスで発展し、ロシアで開花した舞台芸術です。芸術としてバレエが完成したのは19世紀と新しく、ロシアの振付師マリウス・プティパが1880年代から90年代にかけてクラシック形式を確立させました。その後、時代の流れとともに振付家によって改訂され、現代的な要素が加えられてきた結果、作品の原型を留めないほどに変化してきています。今回ここに挙げた作品は、そういった改訂が加えられながら上演され、今日に至ります。

古典作品とはいえ、バレエはエンターテイメントです。どの時代にも、どのカンパニーにも共通して根底にある思いは、「お客様に楽しんでもらいたい」ということです。⾔葉がないからこそ、どの国のどの時代の作品も、観れば理解できるようになっています。ですので、古典だからといって構える必要は全くありません。

バレエは歴史とともに進化してきた芸術です。バレエ作品をよりよく知るには、バレエ史も知っておくとより理解も深まります。

バレエってどんなもの?バレエを知るためのバレエの歴史(1)

また、併せてバレエ用語も知っておくことをおすすめします。

もっとバレエを知りたい!テクニカルスタッフのためのバレエ語解説

参考文献

富永明子(2018) 『バレエにまつわる言葉をイラストと豆知識で踊りながら読み解く バレエ語辞典』 誠文堂新光社 ISBN-13 : 978-4416617953
川路明(1980) 『新版 バレエ用語辞典』 東京堂出版 ISBN-13 : 978-4490102390
渡辺真弓(2012)『名作バレエ50 鑑賞入門 これだけは知っておきたい』 ISBN 978-4-418-12216-5 
乗越たかお(2010) 『ダンス・バイブル コンテンポラリー・ダンス誕生の秘密を探る』 河出書房新社 ISBN-13 : 978-4309272290
ダンスマガジン編集部(1998)『バレエ101物語』株式会社新書館 ISBN4-403-25032-7
柴崎政夫(平成14年) 『バレエ上達へのヒント PRAT2.』 株式会社分園社 ISBN-13 : 978-4893361738
三浦雅士(2009) 『バレエ名作ガイド』 株式会社新書館 ISBN:978-4-403-32031-6
ダンスマガジン 編集(2012) 『バレエ・パーフェクト・ガイド 改訂版』 新書館 ISBN-13 : 978-4403320385

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