舞台照明家同士でZoomお話し会(前編)

コロナウィルスの感染拡大防止のために舞台公演やイベントの自粛が相次いで中止になってから早3ヶ月。その影響は舞台スタッフにも大きく影響していて、無職の状態が続いている人も少なくありません。

そんな中、Twitterで一人の舞台照明家の呼びかけにより、舞台照明に関わっている数名が参加してZoomお話し会が開かれることになりました。

Zoomお話し会の参加者

あいきみゆき @miyuki_apollo
Kaleidoscopic Lighting名義で小劇場から大ホールまで、芝居やダンス、ライブと幅広く手掛けている。機材レンタルも行っている。
伊藤馨 @xink21
『terrace』マネジメントディレクター・ワークショップコーディネーター舞台照明家・製作者・演出家。文化庁主催のワークショップ及び劇作家協会主催のリーディング事業、学校演劇教育プログラムの作成などを中心にワークショップコーディネーターとして幅広く活動している。
岩城保 @TamotsuIwaki
舞台照明家。日本照明家協会理事。元ICU照明委員会(87)。劇団青年団に専属照明家として長く在籍、2012年末に退団。2013年からはフリーで活動。
そらいろくらげ @kurage_suzuki
舞台照明家。会社員。劇場・ホール管理。
中佐 真梨香(空間企画) @4no5noiuna
舞台空間を利用した光と音のインスタレーション作品を制作する団体の代表。インスタレーションアーティスト/舞台照明デザイナー/オペレーター。フリーランスの舞台照明家として小劇場を中心に活躍している。
野村陸人 @nomu_engeki
中央大学文学部日本史学専攻。中学高校で演劇部に所属。高校在学中は自校のホール設備で機材の管理や学校行事の舞台スタッフを行う。音楽、演劇を中心に、照明だけでなく役者や作曲など幅広く活動。劇団Cheminée所属。
松本永 @MatsumotoEi
eimatsumoto Co.Ltd 代表。照明・空間デザイナー。演劇・ミュージカル・日本舞踊から、映画やアート作品の展示まで幅広く活動。

まずは各自で自己紹介

中佐 真梨香(空間企画)
好きな劇場:雑遊
好きなカラーフィルター番号:#37
あいきみゆき
好きな劇場:シアターグリーン
好きなカラーフィルター番号:#LEE161
岩城保
好きな劇場:キラリふじみ
好きなカラーフィルター番号:#B-3
そらいろくらげ
好きな劇場:フィリアホール
好きなカラーフィルター番号:#73
野村陸人
好きな劇場:俳優座劇場
好きなカラーフィルター番号:#88
松本永
好きな劇場:京都市立立誠小学校 音楽室
好きなカラーフィルター番号:#GAM888 (#LEE201と同等の色で抜けても緑味が出てこない。なかなか色抜けしないので経済的とのこと)
伊藤馨
好きな劇場: 下北沢OFF・OFFシアター
好きなカラーフィルター番号:#LEE366

みなさんの状況を教えて下さい

中佐 : みなさん、最近どうですか?

松本 : 順調になくなっています。今日、キャンセルが2つ入った。収録は確定しているけど、7月末まで全滅していますね。

あいき : 7月がどうにかギリギリ残っています。子供さんの発表会なので、夏休みありきでレッスンをしていて、もしレッスンができなくなったらキャンセルになるかもしれないですけど。

くらげ : 現在いる施設は特性上なかなか開催が難しくて、8月くらいまで入らないんじゃないかという感じです。

岩城 : 増員の仕事は3月の時点で全部なくなった。それ以降は発注は発生していない。プランは6月分が早い段階でなくなった。次に演る予定になっているのは9月ですね。

伊藤 : 8月までの分が延期か中止になっているけど、場所が決まっていない状態。10月が入るかどうかというところ。増員は基本的に引き受けないので今は現場がない状態です。

野村 : 大学の入学式がなくなりました。そもそも入学してから一度もキャンパスには行っていないです。4月の下旬からオンライン授業が始まっていて、キャンパスの立ち入りは5月下旬までできない状態です。

照明は高校のときに予定していた現場が3月に2つあったけど、イベント自体がなくなりました。1つは卒業祝賀会のプランオペ、会場管理で携わる予定でした。

もう一つは学校の講堂でやる高校演劇のイベントの会場スタッフを依頼されていたのだけど、イベントごとなくなってしまいました。3月、4月に予定してたイベントも無観客公演や中止になっていて、8月も打診されていたけど、それもなくなってしまいました。

照明家はこれからどうしていったらいいのか

中佐 : 照明家はこれからどうやって生きていけばいいのでしょうか。今、照明という表現に対して需要を感じていません。団体は団体でリモートで演劇をやっていて、もちろん生になったら必要になるとは思いますが、そこで完結し始めています。そうした中で照明はどうしていくべきなのでしょうか。

岩城 : 僕はなくなったらしょうがないと思っています。こればかりは一人一人が考えていくしかない。舞台照明という業種は一緒でも、やっていることは皆バラバラなので、共通して何かを探すというのは無理だと思っている。それなりにやっていくしかない。

僕はYoutubeでの映像配信やnoteの執筆をしてるが、それは僕なりに現場のない中での生き方になっています。解決策は自分の外側にはないと思っています。

伊藤 : くらげさんがnoteに書いていた(注: 本当にコロナ収束後も今までの状態に戻りたいのか )ように、このままで本当にいいのかとは思う。もともと業界的にダメじゃんみたいな。ビビッドに僕らが考えなきゃいけないことだなと思います。今後どうしていきたいかとか。

プランやっている身としてはいくらでも明かりを作っていたいと思うけど、兵隊(増員)に悪いし、みんなにも悪いなとは思たりしていろいろ考えてしまいますね。

Captureについて

伊藤 : 岩城さんがやっているYoutubeのCapture動画(注:「Capture」操作をライブ配信 ---- サスのシュートをやってみる)がうらやましいと思っています。ところで、岩城さんのCaptureって買ったやつですか?(注:CaptureはCapture Visualisation AB社が開発したライティングデザイン、ビジュアライゼーション、ドキュメンテーション ソフトウェア)

岩城 : あのCaptureは、コロナの影響で仕事がなくなってから買った。

伊藤 : やっぱり買ったんだ。学生版が無料公開されているからそれが使えるんだけど、フレネルはあるんだけど凸がないぞと思って。

岩城 : もちろん学生版があるのは知っていたけど、僕は学生じゃないし、学生が使うものだと思っているので普通のバージョンを購入したというだけ。学生版は使ったことがないので違いはわからないかな。

中佐 : 野村くんが使っているのは学生版?

野村 : 僕は学生版を使っています。僕も学生版しか使ったことがないので違いはわからないですね。でも凸はあったように思います。ヨーロッパナンチャラというのが凸レンズなので。

中佐 : たしか1リツイートごとに1台ずつ増えていくやつやっていたよね。

野村 : やりました(笑)途中で心折れたやつ。

中佐 : 結局、何台増えたの?

野村 : ちょっとわかんないですけど、300か400くらい吊った気がします。

みんなそれぞれがやれることをやっている状態

中佐 : 今はみんなそれぞれやれることを探っている状態だと思います。やっている人はちゃんとやっているというか。

岩城 : なぜ照明をやっているのかということが問われている状態になっているよね。もし他に生活できるレベルで収入があったとしたら、それでも照明をやるのかどうか。わかりやすく言えばそこで一つ線が引けると思う。

僕がCaptureやYoutubeでやろうとしているのは、「照明をやりたいのはなぜか」ということを具現化するという感じ。「すごく照明っておもしろそうでしょ」って。

あるいはやっている人に対して「照明っておもしろいものだよね」ということを、劇場に行かないと忘れちゃうので劇場に行った気分になってもらうためにやっている。

僕に関しては収入を得る手段というのはまったく考えていなくて、それはまた別のことだと思う。収入を得る手段というのは。

今の状況で照明さんが困っている理由はそれぞれ2つあって、一つは「照明自体」ができないという、心理的に困っているということ。もう一つは「収入がない」ということ。それはそれぞれ別のことだと思う。

中佐 : たまたまそれが今まで一緒だったというだけで、今この状況になって、2つに分解されてしまったということですよね。別に生きていくためにお金を稼ぐんだったら照明じゃなくてもいいという人もいるだろうし、そうは言っても照明という表現をやりたいからという人もいるということですよね。

岩城 : 表現などのアーティスティックなところは中佐さんのようにインスタレーションなどでやってらっしゃる人もいるけど、劇場のあの場所で機材をいじっているのが楽しいという人は照明さんの中でけっこういると思っていて、そのへんが僕のターゲットになっているんですよ。

中佐 : あーたしかに。

岩城 : いずれにしても、収入とかお金の部分でやっているわけじゃないですね。中佐さんもたぶん関係ないでしょ?

中佐 : 収入につなげようと思ってがんばっていたんですけど、稼ごうと思ってやっていると、本当に需要を感じなくて心が折れそうになるから、ちょっと違うなとここ最近気づいて、お金を稼ぐためにお金を稼ぐのをやめよう週間になってきました。

岩城 : けっきょく、何をして生きているかということになるんですよね。生き方って2つあって、お金を稼ぐってことも生き方だけど、お金を使うってことも生き方でだいたいそのどっちかになっている。そのどっちでもないというか、人間が生きて活動するというのはお金とは関係ないところにもともとはあったはず。

それが劇場に行って機材を扱うこととか、友達としゃべったり、こうやって照明さん同士で話していることだってお金を稼いでいることじゃない。でも僕らがやるというのは、それが本来生きるということだよね。今回はそこまで問題が掘り下げられちゃったということだよね。期せずして。

2011年の震災があったときの小劇場はどうだった?

あいき : 2011年の震災時、ちょうど妊娠中で状況がわからないんですけど、どれくらい小劇場は影響を受けたんでしょうか。

中佐 : 私は2011年は学生だったのでわからないです。しかも2年生だったから卒業してフリーランスになったころはだいぶ復活していました。当時の小劇場の状況について、諸先輩方のお話を聞きたいです。

伊藤 : せいぜい1ヶ月だったかな。

あいき : キャパ関係なくなくなるところはなくなったという感じですか?

伊藤 : ダメージ次第だった気がする。

あいき : そうなんですね。

伊藤 : 設備的にダメージ受けたところもあるし、出演者の方が不安定になっていたというところもあるから、今みたいに一律という感じじゃなかった。

中佐 : 計画停電とかはどうだったんですか?

伊藤 : それはノーダメージだった。ちょうどそのときアゴラや森下スタジオで公演打っていたんだけど、あまり影響は感じなかった。むしろ、「こういうときだから公演やろうぜ」みたいな雰囲気で、今回とは比べ物にはならないかな。

松本 : 私も、直撃受けたものは中止になったんですけど、それ以外のものは翌週から普通に動いていますね。

あいき : 皆さんの精神状態も2011年のときとは比にならないということですよね。

松本 : 種類が違うというか。東北の方に親戚がいたんですが、幸い亡くなるようなことはなかったので。知り合いの方は行方不明とかがあったこと、余震がひどくてしょっちゅう緊急地震速報が鳴るという精神的外傷はあったけど、仕事ができていたから紛れていた気はします。だから、今とはタイムスパンが違いすぎて全然種類が違う感じ。

あいき : 小劇場は今と違ってそこまで長期戦ではなかったということですね。

松本 : そうですね。

あいき : 私もちょうど妊娠していて不安な時期だったときで、主人はコンサートの仕事をしているのでことごとく仕事がなくなっていっていました。今のこの状況も、コンサートが2月くらいからどんどんなくなっています。小劇場のほうも3月くらいまではちょいちょいやっていたけど、4月はもうほとんどなかったという印象を受けています。

うちは子供がいるので稼がないといけないということもあって、主人が以前お世話になったことのある別の業種の会社に一時的に雇ってもらっている状況です。

大人も子供もメンタル面でダメージを受けている

あいき : ここ最近、子供が何度もトイレに行くので小児科に連れて行ったのですが、メンタル面で受診する子が多いと聞きました。逆に子どもたちが接しないので感染症は少なくなったようです。

子供がこういう状態なので、大人もメンタル面に大きな影響を受けていると思います。中佐さんがおっしゃったように、これからどうなるのか、照明の意義とは何かなど考えると気が沈んできますよね。

中佐 : 正直なところ、来年のオファーが来ても受けていいものかどうかわかんなくなってきちゃうんですよね。やるの?本当にやれるのか?みたいな感じで。

あいき : 夏の現場、怖くて人を探せないです。ぬか喜びされるんじゃないかって思って。あと、「本当にやるんですか?この状況で」みたいなことも言われるんじゃないかなと思って。

役者の方はDMとかで嫌がらせされたってけっこう聞きます。「私には決定権なくて役者としてただ出るだけなので主宰でも何でもないのになんで私に来るんだろう」って訴えている女優さんもいて、何だか荒んでいるなと思いました。

緊急事態制限直前の現場ではどういった感染症対策をしていた?

中佐 : 私は2月の終わりから全部なくなってしまったんですけど、知人が3月の末まで関わっていて、そのときは必ず手を洗うようにしたり、劇場内を消毒したり、定期的に換気をしていたりなどの対策を取っていたそうです。もし今後も感染が起きるのであれば、こういった対策を続けてけばいいのにねという話をしました。

あいき : 私も3月の半ばの現場では、アルコールで手を消毒するなど徹底していました。「マスクがない方は受付に言ってください」というようなことも周知していました。

岩城 : 僕は3月に都内で2本観劇したんですけど、終演後の面会をやめることと、消毒をしていました。あのレベルで再開できるなら問題ないけど、今は客席同士の間隔を空けないといけないと言われているので、その条件だと興行的に成立しないのではないでしょうか。

松本 : こないだ、コレオグラファー20人照明10人ぐらいで、あるコレオグラファーと照明さんがつくった作品を見ながら解説するというのをやったんですよ。

そこで思ったのは、コレオグラファーとか演出家とかのそばにいて話を聞くとすごく楽しいし、これが僕の生き甲斐なんだなって思った。あー一人だと何もできへんと。

やっぱりCaptureは本物とは違う

松本 : 岩城さんのCapture動画も、興味はあるんですけど、実際の光じゃないと今ひとつ燃えないっていうか。

岩城 : Captureはやっぱり違うますね、本物とはねやっぱりどうしても。僕はこんなことなければ絶対に触らなかったと思う。シュミレーターなんて必要ないから。でも実際に触ってみてわかったのは、本当に違うってことですよね。全く本物の照明とは似ても似つかないので。「やっぱりやっている意味あったじゃん俺たちって」という確信が深まるばかりですよね。

松本 : この間のコレオグラファーのとき、自分が演出する作品の絵コンテを描いてきている人がいたんですが、他のコレオグラファーの人が「絵コンテあれば場当たりまでにもっと詰められるんじゃない?」と言っていたんですよ。だから、「絵コンテは偽物だけど便利だから、とわかっていて使うならいいけれど、アテにしだしちゃうと逆に大変だからちゃんと考えなきゃだめだよ」って話をしたんですよ。

Captureなんかは意思の疎通とか、こんなこと考えてるという手助けにはなると思う。「空間をどんな風に使おうかな」っていう見本として、打ち合わせなんかにすごくいいと思う。

岩城 : 僕も完全にその用途ですね。

野村 : 僕の場合、学校でやっていた時は講堂でやる文化祭の出し物の照明を請け負うときに使っていたので、「サスが」とか「SSが」とか言っても伝わんないんですよね。でもCaptureで絵作りして見せると伝わりやすかったです。そういう人たちはCaptureの照明と本物の照明の違いは気にならないと思うので、絵コンテの代わりのビジュアライザーとして使っていました。

松本 : 無理なのは承知で、「イメージですよ」って伝えないといけないですよね。でも、道具としていろいろな話をするのにはすごく可能性を秘めているなと。

例えば全く照明の「しょ」の字も知らない、照明のイメージもない、自分が何を見せたいのかわかっていないような人たちとやるときに、お互いに「こんなこと考えてて」と伝えるのに使うにはすごく便利だと思う。その反面、頭でっかちの人相手だと逆に面倒なことになりそう。「こういう風にできるって言ったじゃん!」と言われたりとかしそうで。

岩城 : 僕が触ってみた印象だと、シュート(フォーカス)するのは意外とリアルなんですよね。シュートしている感はあって、学生などの未経験者に例えばフロントのシュートの練習させるにはいいかもしれないと感じました。

ただ劇場一式仕込んで明かりを出してみると、全然明かりにならない。それっぽく見せるには実際とは違うバランスにしなくちゃいけない。いっぱい仕込みすぎると、むしろ平坦な明かりになっちゃう。シミュレーションでいい感じに見せるにはコツがあるというのがわかった。

中佐 : 色の混ざり方とかも本物とは絶対違いますよね。重ねたときとか。

野村 : 特にcaptureは色が混ざらないんですよ。あとはいっぱい仕込むと影が潰れちゃいますね。

松本 : スチールの撮影の時用にわざと明かりをずらすのと似ている感じだね。

伊藤 : 僕はMagicQに付いているビジュアライザーを使っているんだけど、そっちはなかなかおもしろいかな。ただデータは全然データ通りになんないけど。

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前編はここまでです。

後編はこちらからどうぞ。
舞台照明家同士でZoomお話し会(後編)

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