今年も、文化庁メディア芸術祭に行ってきました。
文化庁メディア芸術祭は、アート、エンターテイメント、アニメーション、マンガの4部門において優れた作品を顕彰するとともに、受賞作品の鑑賞機会を提供するメディア芸術の綜合フェスティバルです。(ガイドブックより抜粋)
展示作品は、国立新美術館を中心に、他に六本木ヒルズなどでもアニメーション作品の上映やパフォーマンスイベントが開催されます。
50 . Shades of Glay
展示会場を入ってすぐに飛び込んできたのは、額縁に飾られた中に書かれているプログラム言語。作者が過去30年間に学んださまざまなプログラミングの言語やソフトウェアを用いて、50段階の灰色のグラデーションでできた画像が作品となっています。ほんの少々プログラミングをかじったくらげにとって、気になる作品です。
モニターに映し出されているのはBASIC、Fortran、Pascal、Lisp、Lingo、ActionScript の5種類の言語によって生成された、50段階の灰色のグラデーションです。
グラデーションはCSSでしか生成できないと思っていたのですが、プログラム言語でも生成できることを知りました。そして、芸術作品にもなりうるということも知りました。
各言語のソースは以下のサイトで確認できます。
50 . Shades of Glay
(不)可能な子供、01:朝子とモリガの場合
昨年は、何かとLGBTについてのニュースが取り沙汰された年でした。そういった背景もあって印象に残った作品です。
朝子とモリガは、実在する同性カップルです。本来なら子供が生まれるはずのないカップルですが、遺伝情報をランダムに生成し、それを元に合成写真を作成することで家族写真が出来上がりました。
遺伝子研究によって今まで不可能だったことが可能になろうとしているということが、警鐘なのかそれとも希望なのか。見る人によって感じることは様々だと思います。ちなみに、くらげは単純に「すごいな」と感じました。
関連リンク:(Im)possible Baby, Case 01: Asako & Moriga
Double Click to Open
画面に映し出されているのは、閉まっているドアです。そして、そのドアを開けようとクリックしたりダブルクリックしているカーソルが動いている映像作品です。
画面にドアがあると、みんなそのドアを開けようと開きそうなところをクリックしたりダブルクリックしてしまうよね、というのがコンセプトです。「あ〜、たしかに」と思いました。
The sound of empty space
何もない空間にあるのは、ブームスタンドに刺さっている有線マイクロフォン。そして、その下には大小のスピーカー。マイクの向いている先は、並んでいるスピーカーなので当然ハウリングが起こります。
しかし、キーンというような耳障りな音ではなく、「うわーんぅおーん」というような不思議な音。周りの環境に左右されるため、常に変化したハウリング音を生成しています。
音響にとって、ハウリングは避けたいトラブルの一つです。しかし、それがアートにもなるのです。しかし、ケーブルがちょっとスタンドに巻きつけ過ぎじゃないかと思うのですが。
かくかくしかじか
言わずと知れた、東村アキコ作の自叙伝的な作品です。少女マンガ家を夢見ていた頃から、夢を叶えてマンガ家になるまでとその後の半生を題材にしています。
〜あらすじ〜
「自分は絵がうまい」とうぬぼれていた高校3年生の林明子は、美術大学入学を志し、海の近くにある美術教室に通うこととなる。
そこで出会った絵画教師・日高健三は、初対面で絵画教師とは思えない強烈なインパクトを放ち、明子が描いたデッサン作品を見るなり、竹刀を振りかざして「下手くそ」と言い切った。
そこから日高先生と明子、2人の物語が始まっていく─。作者の人生に大きな影響を与えた恩師との数々の思い出とともに、自らの高校生活から大学での生活、そしてマンガ家デビューへの道のりを描く。
マンガを「描く」ことへの愛が、個性的なキャラクターたちとさまざまなエピソードを通して表現され、笑いと涙の要素が随所に盛り込まれた作品。
(受賞作品紹介サイトより抜粋)
東村作品は、「ひまわりっ〜健一レジェンド〜」と、「海月姫」を読みましたが、テンポのよさが好きです。そして、なみなみならぬものを感じます。この作品は、まだ1巻しか読んだことがないのですが、いろいろ激しいです。ただ、この作者のすごさはひしひしと伝わってきます。
ネームや原画の展示もあります。
YASKAWA×Rhizomatiks×ELEVENPLAY
何もない空間で動いているのは、産業ロボットです。エレクトリックな音楽に合わせて、腕を振ったり、荷物を積んだりとリズミカルに動きます。そのなめらかな動きは、まるで切れのある人間のダンサーのようにも見えてきます。
やがて、人間のダンサーが登場し一緒に踊り始めるのですが、プロジェクションマッピングも相まってこのコラボレーションがなんだかとても不思議な空間に見えてきました。
産業技術の可能性を見ているというよりは、エンターテイメントの新しい可能性を見ているようにも感じました。
締めくくり
以上、くらげアンテナに引っかかった作品集でした。今回は、ここで取り上げていない作品も含めてロボットに関する内容が目立ちました。テクノロジーとエンターテイメントはこの先もっと融合していくように感じます。
そしてもう一つがLGBT。
マンガ部門では、身近な同性婚問題について取り上げている「弟の夫」という作品も受賞しています。この作品は、父娘で暮らしている家にある日突然、カナダで亡くなった弟の結婚相手、マイクが訪ねてくる作品です。絵柄が好みではないので、くらげアンテナには引っかかりませんんでしたが、作品を読んでみて何か残るものがありました。
文化庁メディア芸術祭は、3月14日まで開催しています。
会期 :2016年2月3日(水)~2月14日(日)
会場 :国立新美術館
入場料:無料
時間:10:00〜18:00 (金曜は20:00まで)
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