山梨県内には、6つの大きな多目的ダムがあります。すでにうち3つは訪れているので、今回は残り3つをまとめて訪れることにしました。
訪れた時期は9月下旬。前日に山の中を走るクリスタルラインを走破して八ヶ岳に泊まったので、北杜市にあるダムから巡っていくことにします。
北杜市にある大門ダムを見学するよ
大門ダムは、清里高原の近くにある多目的ダムです。勾配が急なため、伊勢湾台風などで大きな水害を起こしていた大門川の洪水を防ぐため、1988年に建設されました。
特徴的なのは、湖水を循環させるための曝気装置やアスファルトを用いた遮水壁があることです。
大門ダム右岸は、火山性堆積物が厚く覆っていて漏水性が高いため、厚さ30cmのアスファルトで山肌を覆う「アスファルトフェイシング」が採用されました。ダム壁面にある黒い部分が遮水壁です。
この遮水壁の面積42,000m2、最大水深50mという規模は国内では最大級です。昭和61年にはその高い技術が評価され、土木学会賞を受賞しています。
湖面には6箇所の曝気装置(湖水循環装置)が設置されています。この曝気装置は、水中に立っている空気揚水筒から圧縮空気を間欠的に噴出させてダムの底層水を揚水し、対流を発生させて水質の悪化を防止するものです。
表層の藻類を異常発生を防止、藻類等の栄養である窒素、リンの溶出を抑制、水温の均一化などの作用で水質の悪化を防ぐ効果があります。
残念ながら、くらげが訪れたときは曝気装置が作動していませんでした。
ダム湖は八ヶ岳のふもとに広がる清里高原にちなんで、清里湖と名付けられています。
ダムの天端は道路になっているため、たまに車が通ります。
ダム湖に転落したときのために救命胴衣が用意されています。他のダムでは見たことがありません。
ダムの管理事務所は駐車場の上にあります。正面に見える階段は登れません。普通に道路から車などで行くことができます。
駐車場側から見たダム。越流装置がバランス良く配置されています。天端の下に自由越流式洪水吐が9つ、真ん中の出っ張った部分にラジアルゲート式の洪水吐が設置されています。
下流部は曲がっています。左側の建物は発電設備です。
予備のローラーゲート装置。
ゲート内部。
管理事務所から眺めたダムの天端。
場所 | 大門ダム |
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ダム型式 | 重力式コンクリートダム |
河川名/水系名 | 一級河川富士川水系大門川 |
堤頂長 | 180.0m |
堤高 | 65.50m |
ダム湖 | 清里湖 | 用途 | 洪水調節、防災/不特定用水、河川維持用水/上水道用水/発電 |
管理 | 山梨県 |
駐車場 | あり 3台 |
住所 | 〒407-0301山梨県北杜市高根町清里3654-7 |
サイト | ようこ大門ダムへ!!|山梨県 |
塩川ダムを見学するよ
続いて、大門ダムと同じく北杜市にある塩川ダムに向かいます。
塩川は金峰山を源流として富士川の上流部・釜無川へ合流する一級河川です。河川勾配が急なこともあり台風などの大雨によって増水し水害を引き起こしていました。
そこで山梨県が水害を防ぐ目的でダム建設を計画。1989年に着工し、1997年に完成しました。
ダム湖左岸は透水性が高い地質だっため、上部を石や岩石を主材料としてつくられるロックフィル式で積み上げ遮水工事をし、下部は地中深くまで連続地中壁によって遮水されているのが特徴です。ちょうどビジターセンターや公園のある辺りです。
一度国道141号線を南下して県道23号線で北上し、30分ほどで到着。
塩川ダムの天端は県道610号線になっています。交通量は少なめですが、割とスピードを出しているので、走路を渡るときは注意が必要です。
実はこの正面のエレベーター塔から、ダム内部とダムの下流部に行くことができたということを後で知りました。
常用洪水吐から放流されています。緑色の屋根の建物は発電施設です。
ちょっと見えにくいのですが、天端の下に自由越流式洪水吐が並んでいます。
管理事務所はすぐ近くにあります。全体的に建物の屋根が緑色になっていてかわいいです。
ダム湖は近くの瑞牆山からとってみずがき湖を名付けられました。
アーチ橋は鹿鳴峡大橋です。
対岸からも鹿鳴峡大橋が眺められます。このみずがき湖の周りをぐるっと周れる道路は展望台や駐車場、東屋なども完備されていますが県道から外れていることもあって訪れる人が少ないのかものすごく路面が荒れています。
場所 | 塩川ダム |
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ダム型式 | 重力式コンクリートダム |
河川名/水系名 | 富士川水系塩川 |
堤頂長 | 225m |
堤高 | 79m |
ダム湖 | みずがき湖 | 用途 | 洪水調節、防災/不特定用水、河川維持用水/灌漑用水/上水道用水 |
管理 | 山梨県 |
駐車場 | あり (塩川ダム管理所内) |
住所 | 〒407-0301 北杜市高根町清里3654-7 |
サイト | 塩川ダムへようこそ|山梨県 |
クリスタルラインを経由して荒川ダムに向かうよ
塩川ダムから増冨ラジウムライン、クリスタルラインを経由し、荒川ダムまで山をいくつも超えていきます。
クリスタルラインの北杜市と甲府市の境目付近。不思議な雲のかかり方をしていました。
相変わらず山の天気は不安定です。
いこいの里付近。50代以上の方にはたまらない光景でしょう。
いくつもの山を超えてきたけど、この先まだまだ山を超えていきます。
荒川ダムを見学するよ
いくつもの山を超え谷を超えてようやく荒川ダムに到着しました。もうすでに16時を回っています。
荒川ダムは、山梨県甲府市を流れる富士川水系荒川に建設され、洪水調節や上水道用水確保の用途を持つロックフィルダムです。
荒川は勾配が急峻なため、伊勢湾台風などでたびたび水害を引き起こしていました。山梨県は河川改修が困難なため、ダム建設を計画。1973年に着工し、1985年に完成しました。
放流設備は、ダムの左岸に設置されている自然越流式の非常洪水吐と、ラジアルゲート1門、スライドゲートが2門設置されています。
天端は管理事務所の通用口になっていて、関係者以外の車両は通行できません。
こちらが自然熱流式の洪水吐。これまで使われたような形跡が見当たりません。
ダム湖はダムに沈んだ旧村名を取って能泉湖と名付けられています。湖の周囲には周遊道路が敷かれており、公園や多目的広場など他のダムより整備されています。
赤い屋根の取水塔がかわいいです。
ちょっとピンぼけしていますが、ダムの下部。道路が見えますが関係者以外は入れません。
山梨県内の同じロックフィルダムに広瀬ダムがありますが、広瀬ダムと比べると規模は圧倒的にこちらのほうが大きいです。
ここから少し下ると、観光地として有名な昇仙峡があります。紅葉のスポットとして有名なので、11月頃の観光シーズンは道路もかなり混むので要注意です。
場所 | 荒川ダム |
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ダム型式 | センターコア型ロックフィル |
河川名/水系名 | 荒川/富士川水系 |
堤頂長 | 320m |
堤高 | 88m |
ダム湖 | 能泉湖 | 用途 | 洪水調節、農地防災/不特定用水、河川維持用水/上水道用水 |
管理 | 山梨県 |
駐車場 | 多目的広場にあり |
住所 | 〒400-1213 甲府市川窪町浦の山972 |
サイト | ようこそ荒川ダム管理事務所へ|山梨県 |
締めくくり
山梨県のダムは、埼玉県と比べるとほとんど観光地化されておらず、ただそこに佇んで自然に溶け込んでいるような静けさを感じます。
今回3箇所いっぺんに回ってみると、それぞれ違った特徴があるので1箇所だけ訪れるより楽しいと実感しました。
ただ、比較的アクセスはいいのですがそれでも途中は山道や険しい林道を経由するので、6時間近く掛かってしまいました。
うっかりすれば街灯のない山の中で夕暮れを迎えることになりかねないので、日の長い時期に訪れることをおすすめします。
おさらい
走行距離=200km
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