埼玉には、発電や治水のために水を貯め込む貯水ダムの他に、土砂を貯め込む砂防ダムがあります。観光地や釣りスポットして知られる貯水ダムと比べて、砂防ダムはその存在をほとんど知られていません。
観光地化されていない地味な貯水ダム以上に地味な存在ですが、貯水ダムと同じように災害を減らすための重要な役割を担っています。
そんな山の中にひっそりと佇んでいる砂防ダムにスポットライトを当てるべく、訪れることにしました。
砂防ダムってどういうもの?
日本の河川は勾配が急で地震や大雨により土砂災害が起こりやすい地形のため、毎年全国各地で土砂災害が発生して人命や家財が奪われています。
土石流災害は、大雨の影響で谷や斜面にたまった土砂が雨による水と一緒に一気に流れ出して起こる災害のことを言います。
砂防ダムは、土石災害が発生した際に流れ出る土砂を受け止め、貯まった土砂を少しずつ流すことによって下流に流れる土砂の量を調節する施設です。
砂防ダムの役割は、土砂を止めることで川底が削られることを防ぎ、勾配が緩くなり川幅が広がることで水の流れを遅くすることができます。また、土砂が貯まって川底が上がることで山くずれを防止します。
赤坂沢砂防ダムを鑑賞するよ
赤坂沢砂防ダムは、埼玉県の西部に位置する越生町の山中にある砂防ダムです。埼玉県が砂防ダムのPRとして1991年(平成3年)に建設しました。
周囲には駐車場もトイレもなく、ひっそりとしています。
ダム堤体の中央部分には水通しと呼ばれる水を越流させる穴が3つあり、その形状からまるで泣いているように見えることで有名なダムです。
今回訪れたときは片目でしか泣いていませんでした。これはあれだ、くらげが片方のハードコンタクトがゴロゴロして痛くて涙を流しているのと一緒だ。
また、砂防ダムの手前には人口の木のオブジェがあり、その木の枝に小便小僧が建っています。この小便小僧はダムの上流で取水した沢の水を放水しています。
かなり激しい勢いで飛ばしています。たまに土砂が目詰まりして尿管結石を発症することがあるそうです。それは痛そう...。
小便小僧の下には猿もいます。
こんなマニアしか興味なさそうなところ、ほぼ誰も来ないだろうと思ってゆっくり写真と動画を撮っていたのですが、しばらくすると一台の車がやってきて、ダムの写真を撮りに降りてきました。物好きもいるものだ。
赤坂沢砂防ダムはダムの下からしか眺めることができず、ダム湖や堤体の上を見ることのできるルートはありません。
場所 | 雀川砂防ダム公園 |
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ダム型式 | 重力式コンクリートダム |
河川名/水系名 | 赤坂川/荒川水系 |
駐車場 | なし |
住所 | 〒350-0422 埼玉県入間郡越生町小杉 |
サイト | 【砂防施設】 赤坂沢〔越生町〕|彩の国埼玉県 |
カフェでお昼ご飯を食べるよ
お昼ご飯は、さっき通った道で見つけたカフェに寄ります。
オクムサ・マルシェという古い家屋を改築したお店です。
駐車場は手前と奥にそれぞれ完備されています。
頼んだのは「季節野菜の薬膳カレー」です。優しい辛さでおいしくいただけました。
カレーのあとは奥武蔵ブレンドのコーヒーを注文。窓から入ってくる心地良い初夏の風を感じながら、のんびり過ごしました。
場所 | オクムサ・マルシェ |
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営業時間 | 日・月・火・水 11:00〜17:00 (ランチ 11:00〜14:00) |
駐車場 | 普通車7台、軽自動車2台、サイクルラック有り |
住所 | 〒350-0422 埼玉県入間郡越生町小杉756 |
サイト | オクムサ・マルシェ |
雀川砂防ダム公園を散策するよ
続いて、ときがわ町にある砂防ダム公園に向かいます。
ダム公園のある辺りは雀川の源流域で、東に6kmほど流れて都幾川に注ぎます。雀川はひとたび洪水が起これば甚大な被害をもたらしていて、土砂災害防止のために1980年(昭和55年)に着工し、1988年(昭和63年)に完成しました。
ダムの周囲は自然環境の保全することを目的に公園として整備され、1991年に開園しました。公園内には桜の木やあじさいが植栽されていて、4月はお花見、6月はあじさいの花、秋は紅葉を楽しむことができます。
ダムの周囲を囲うように作られた遊歩道を歩きます。マムシ注意の看板を横目に、しばらく登っていくとダムの上に出ました。
さらに登っていくと、雀川源流域にたどり着きます。流れはとても緩やかで、夏は沢遊びができるようになっています。
ダムの反対側に出ました。堤体上部の切り込み部分が水通しになっていて、溢れた水が越流する仕組みになっています。
堤体の上は立入禁止です。
下から眺めてみました。
堤体の下部になにか埋められた跡があります。ここはもしかしたら元々は水通しだったのかもしれません。
流れの勢いを減衰させる水叩き部分はしばらく水が流れていない様子でだいぶ水が濁っていましたが、それでも元気に魚が泳いでいました。
場所 | 雀川砂防ダム公園 |
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ダム型式 | 重力式コンクリートダム |
河川名/水系名 | 都幾川左支川雀川/荒川水系 |
堤頂長 | 110.75m |
堤高 | 17.0m |
駐車場 | あり |
住所 | 〒355-0344 埼玉県比企郡ときがわ町日影636−1 |
サイト | 雀川砂防ダム公園|埼玉県ときがわ町 |
舘川ダムを鑑賞するよ
次に向かうのは、小川町にある舘川ダムです。
舘川は荒川水系の一級河川で、砂防指定地に指定されています。舘川ダムは館川流域の砂防と利水を目的として1983(昭和58)年に建設された重力式コンクリートダムです。
手前は広場になっていて、トイレも完備されていますが、ぼっとん便所です。
堤体は2段構えになっていて、本体の手前に副ダムが併設されています。
ダムの堤頂部には以前は林道を通って行けたようですが、くらげが訪れたときは封鎖されていました。封鎖されてからだいぶ経っているような感じです。
場所 | 舘川ダム |
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ダム型式 | 重力式コンクリートダム |
河川名/水系名 | 舘川/荒川水系 |
堤頂長 | 本ダム 95.0m/副ダム 52.0m |
堤高 | 本ダム 26.0m/副ダム 8.5m |
駐車場 | あり |
住所 | 〒355-0327 埼玉県比企郡小川町腰越1878 |
サイト | 雀川砂防ダム公園|埼玉県ときがわ町 |
七重川砂防堰堤群を鑑賞するよ
舘川ダムから峠を越えて、ときがわ町に向かいます。
険しく薄暗い峠道を登っていくと、やがて開けた場所に出ました。奥武蔵の山々が連なっています。あの山々の中に、以前走った奥武蔵グリーンラインが通っています。
峠道を下っていく途中に現れるのが、七重川砂防堰堤群(ななえかわさぼうえんていぐん)です。
七重川上流部一帯は急傾斜地が多く、大雨の度に大量の土砂が削られ、下流に流出していました。
明治43年の大水害では下流域に大きな被害をもたらし、これを契機に埼玉県は荒川の河川改修とともに、都幾川上流部に砂防ダムを築くことを計画しました。
こうして1917(大正6)年~1950(昭和25)年に築かれたのが七重川砂防堰堤群で、埼玉県砂防発祥の地にもなっています。
自然石を積み上げて造られた階段状の堰堤は、岐阜県安八郡墨俣町(すのまたちょう/現・大垣市墨俣)の職人を招いて技術指導を受けて築かれました。大正・昭和初期当時の砂防工法を遺すということから、2007(平成19)年度に日本土木学会の「選奨土木遺産」に認定されています。
場所 | 七重川砂防堰堤群 |
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河川名/水系名 | 七重川/荒川水系 |
駐車場 | なし |
住所 | 〒355-0366 埼玉県比企郡ときがわ町大野 |
サイト | 【砂防施設】 七重川〔ときがわ町〕|彩の国埼玉県 |
三波渓谷で夕涼みするよ
ときがわ町から県道172号線を越生方面に向けて走っている途中、「三波渓谷」という表示を見つけたので立ち寄ってみることにしました。
三波渓谷は都幾川にある景勝地で、「御荷鉾緑色岩」(みかぶりょくしょくがん)と呼ばれる緑色をした岩石からできています。三波渓谷という名称の由来は、群馬県藤岡市の三波川付近で産出される、緑色の庭石「三波石」によく似ているからこの名がついたようです。
この石に似た岩石が渓谷をつくっていることから、この渓谷の名がついたようです。
駐車場から階段を降りればすぐに景勝地にたどり着きます。
夏は水遊びの家族連れで賑いますが、この時期はまだ誰もいません。静かな夕暮れを楽しめます。
締めくくり
今回砂防ダムを訪れてみて、貯水ダムとは違った魅力を感じることができました。
今回訪れた砂防ダムでほぼ埼玉県内のダムはコンプリートしましたが、その全てが荒川水系です。どれだけ荒川が暴れ川なのかが、よく理解することができました。
砂防事業では、砂防ダムは高さが15m以上、それ以下は砂防堰堤。小川砂防ダムは、川沿いを走る県道が川を離れヘアピンで土坂峠へ登りはじめる所にある。竣工記念碑もある。昭和53年だったか。すぐ手前に砂防事業のPR看板がある。
小鹿野町飯田の栗尾沢堰堤群が最近、土木遺産に認定されました。
信之輔さん
いらっしゃいませー。
砂防ダムと呼ぶには高さの規定があるんですね。
小川砂防ダムは今度県道71号線を通るときに注意して探してみます。
栗尾沢堰堤群はグーグルマップで調べてみたのですが、299号線に埼玉の砂防発祥地の記念碑があるんですね。
堰堤郡には近づけそうなルートが見当たらないので拝めるのは難しそうです。
こんにちは。
初めて書き込みいたします。
最近、ハンターカブに乗り始めました。
小さいって面白い という面白くない(笑)雑記も書いてます。
くらげさん&カブの組み合わせ、似合ってます。
文章も上手いし、楽しく読ませていただいております。
ダムとか橋とかって人口構造物としてはとても大きくて、かつ人の営みを支える地味で寡黙な存在ですが、そのスケール感とか支えてる質量感とか、縁の下の力持ち的な楽器で言うとベースみたいな魅力を僕は感じています。
小さい砂防ダムも災害時に土石流に翻弄されつつ抗う姿を想像すると、名もなき地味な構造物であっても、なんかドキドキしちゃいます(笑)。
くらげさんの記事、楽しみにしています。
Ver.34さん
いらしゃいませー。
返信遅くなってごめんなさい。
お褒めいただきありがとうございます!
自然の中に建っている建造物は地味で目立たない存在だけど、いざというときは身体を張って守ってくれるその姿に惹かれますね。
ハンターカブに乗られているんですね。ハンターカブもこういう山の中がよく合いそうです。
C125よりさらにシート高が高いので、乗ってみたいと思いつつ手が出せません。あと身長が5センチ大きかったらなー。
またぜひお越しくださいませ。
毎度ぉ 今回は砂防ダムですか。何やら最近はダムや工業地帯やコンビナートなどの施設のような人工的に造られた建物探訪を俳優さんよろしく探索される方々 特に女子が沢山いらっしゃるようですね。何でしょう?あの非科学的な造りやダイナミックな大きさに惚れるんでしょうかね。私ら昭和世代のバイク乗りは中々選ばないテーマなんですな。まぁ我が埼玉県には その類いの物が多数ございますからしらみ潰し(笑)でいらして下さい。暑さもかなり厳しいので防熱グッズで快適な旅を楽しんで下さい。
いのぶーさん
何でしょう。何か言葉に出来ないけれど惹かれるものがあるんです。
こんばんは。
砂防ダム知らなかったので勉強になりました。現代の自然災害も大変ですが、技術がまだ確立されていなかったような時代に自然の猛威と向き合うのはどれだけ厳しかっただろうと思いを馳せてしまいました。そして水通しの顔面白いですね😂
自分もちょうど今日ダム初めをして3つはしごしてきました。ダム、いいですよね。
まるこめさん
すごく返信が遅くなりすみません。
YouTubeの方にもコメントいただきありがとうございます。狙ってあの穴の配置にしたのか気になりますね。
昔の人達ががんばってくれていたから、今の技術があるんだと思います。
ダム、他にもいっぱいあるので楽しんでくださいね。
今日雀川砂防ダムをはじめて見てきました。大きい。秩父市上吉田に小川砂防ダムがある。県道から近いが木が生い茂り見えにくくなっている。訪れる人もない不遇な砂防ダムだ。でもそういうものなのか。
信之輔さん
小川砂防ダム、初めて聞きました。
県道71号線は走ったことあるのですが、ぜんぜん砂防ダムのある感じがしなかったです。