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初めてカブに乗る人のための、カブの取扱説明書

街中でよく見かける働くバイク、カブ。どこにでもいる地味な存在だったカブですが、ここ数年でその人気はうなぎのぼり。キャンパーやリターンライダー待望のハンターカブCT125の登場や、アニメ化された小説「スーパーカブ」の影響でカブに乗る人が増えています。

そこで、カブ歴5年のくらげがカブ初心者に向けてわかりやすく操作方法を説明いたします。

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自動遠心クラッチってなに?

カブの特徴は、自動遠心クラッチというカブ特有のクラッチ機構が使われています。クラッチは、「動力伝達装置」といい、エンジンとトランスミッションの間に取り付けられています。エンジンからの動力をリヤタイヤに伝えたり切り離したりするスイッチのような装置です。
一般的なバイクのMT(マニュアル・トランスミッション)車は、クラッチ操作のときに左ハンドルにあるクラッチレバーを握ると、エンジンの回転力を遮断してシフトを変更することが可能となります。

対してカブに搭載されている自動遠心クラッチはクラッチレバーを握る必要がなく、エンジンを掛けてシフトを入れたらすぐに発進することができます。シフトチェンジのときは、足元のシフトペダルを踏み込むだけでシフトチェンジをすることができます。
そのため、カブの左ハンドルにはクラッチレバーが付いていません。これは、「お蕎麦屋さんが片手でも運転できるように」というのがスーパーカブのコンセプトだからです。

自動遠心クラッチは、エンジンの回転数が上昇するとクラッチがつながり、低下すると切れるという単純な仕組みです。
エンジンの回転が上昇すると回転によって重りに遠心力が働き、クラッチが繋がります。回転が下がり始め遠心力が小さくなると、クラッチが解放されます。変速の場合も、シフトペダルを操作することで重りがクラッチから離れて動力が断たれて変速、その後また接続されます。

カブのシフトパターンは普通のバイクと違う

カブのシフトパターンは、ロータリー式に近いリターン式です。正確には、走行時はリターン式で停車時のみロータリー式になる機構です。シフトチェンジは左側のステップを挟むように設置されているシフトペダルの前後に踏み込んで操作するので、シーソー式とも呼ばれます。

【走行中のシフトパターン】
前ペダル:N→1→2→3→4
後ペダル:4→3→2→1→N  

【停車時のシフトパターン】
前ペダル:N→1→2→3→4→N→繰り返し
後ペダル:N→4→3→2→1→N→繰り返し   

チェンジパターンは一般的なリターン式とは異なります。普通のバイクはNから踏んで1速に入れ、そのあとはペダルを足の甲で掻き上げていきますが、カブはシフトアップもつま先で踏んでいきます。
走行中はトップギアの4速までシフトアップすると、安全上の理由からいくら踏んでもニュートラルに入らない仕組みになっています。たまに何速まで上げたのか忘れて、うっかり幻の5速に入れてしまいますが、シフトはトップギアのまま変わりません。

シフトダウンは、逆に後ろペダルを踏んでいきます。かかとでも踏めますが、よほど足の大きな人じゃない限りはつま先で踏んだほうが踏みやすいです。

そして停止時のみ、4速からさらに前ペダルを踏み込むとニュートラルに戻り、ニュートラルから後ろペダルを踏み込むと4速に入ります。

カブのギアチェンジってどうやるの?

発進からシフトアップの手順

1速に入れる→アクセルをひねる→すぐに戻して2速にシフトアップ→少し進んでアクセルを戻す→3速にシフトアップ→速度が40km/h以上になったら4速

という順番でシフトアップをしながら進んでいきます。

排気量別に速度の目安を記載しておきますので、参考にしてください。

50cc

C50スタンダード/デラックス プレスカブ50 リトルカブ

1速 0~20km/h
2速 13〜40km/h
3速 20km/h以上

C50カスタム リトルカブ

1速 0~18km/h
2速 13〜40km/h
3速 20〜85km/h
4速 20km/h以上

110cc

1速 0~30km/h
2速 13〜55km/h
3速 20〜80km/h
4速 25km/h以上

125cc

1速 0~35km/h
2速 15〜60km/h
3速 20〜85km/h
4速 25km/h以上

それぞれ割と広い範囲で速度に対応しているので、慌ててシフトチェンジしなくても大丈夫。
低いシフトのままで速度を出すと、エンジン音が大きくなってびっくりしますが、それくらいではまず壊れることがありません。

ただし、50ccだと1速は非力すぎてスピードが出ないので、1m位走ったらすぐに2速に入れることをおすすめします。
110cc以上だと1速で発進しても割とすぐに20km/hは出ます。テンポよくシフトアップしていけば、車の流れにも乗ることができます。

ただ、流れの早い幹線道路ではもたもた発進できないので、2速発進ですぐに30km/hまで出すことが多いです。慣れてきたら2速発進もやってみてください。
ブレーキを離しながら少し強めにアクセルを捻ると発進できます。クラッチレバーを操作しないので、エンストの心配がありません。

シフトダウンの手順

シフトダウンは、加速力を出したいときに使用します。

3速や4速で走っていて、アクセルを捻っても加速しないくらい速度が落ちてきたら、後ろのペダルをつま先で踏んでシフトダウンします
高いシフトで坂道を登っていて、速度が落ちてきたときにもシフトダウンをします。

ここで注意したいのは、速度が出ているときにシフトダウンすると強烈なエンジンブレーキがかかり、ガクンと前後に揺さぶられます。
なので、慣れないうちは十分に速度を落としてからシフトダウンするほうが安全です。

安全にシフトダウンできる速度の目安は以下の通り。

50cc

4速→3速 30km/h以下
3速→2速 15km/h
2速→1速 10km/h

110cc,125cc

4速→3速 40km/h以下
3速→2速 30km/h
2速→1速 15km/h

シフトダウンするときに軽くアクセルを回すと、MT車の半クラッチと同じ状態になり、エンジンブレーキが軽減されます。これをブリッピングシフトといいます。
MT車を運転する方であればよく使う方法ですが、クラッチレバーのないカブでは速度が落ちてからシフトダウンするだけで強烈なエンジンブレーキを防ぐことができるので、正直あまり使ったことはありません。

停止するとき

停止するときは、シフトダウンしながら停止する必要はありません。停止してからニュートラルに入れ、1速に入れます。

信号待ちのときは、ニュートラルのまま発進しようとして空ぶかししてしまい、慌てて1速に入れてあやうくウィリーしかけて看板に突っ込むなんてことがあると危ないので1速に入れています。
カブなら1速に入れていてもエンストしません。

たまに、信号で停まろうとブレーキを掛けて速度を落としたら、信号が青になったので発進しなくてはいけないというときがあります。前の車がゆっくりの場合は一度停まって1速入れてから発進しますが、すでに動き出している場合はシフトダウンしてそのまま進むこともあります。
そういうときも、速度が十分落ちていることを確認してからシフトダウンし、すぐにアクセルを開いて加速すると安心です。

坂道発進

車やバイクのMT車を乗ったことがある人ならわかる、恐怖の坂道発進。下手すれば坂道をバックで下るかエンストするという事態になります。

カブにはクラッチがないのでそんな心配はありませんが、二輪車は低速であればあるほど不安定になる乗り物です。不安定な状態で坂道を発進しながらシフトチェンジしていくので、コツは覚えておいたほうが安全です。

坂道で停止したら、右足で後輪ブレーキをしっかり踏み込んでから1速に入れます。発進するときは、平地よりも少し強めにアクセルを回しながら、徐々に右足を上げてブレーキを解除します。
発進して15km/hまで1速のまま速度を上げてから2速に入れ、2速で十分に引っ張ってから3速に入れます。ただし、50ccのカブだとがんばっても1速は10km/hしか出ないので、すぐに2速に入れて速度を上げてください。

カブのスタンドは2つある

多くのバイクにはセンタースタンドもしくはサイドスタンドのどちらかしかありませんが、カブには両方のスタンドが備わっています。

これは、配達で使用されているスーパーカブならではの特徴です。配達で頻繁に停車する場合、いちいちセンタースタンドを掛けていては手間がかかります。サイドスタンドであれば、すぐに乗り降りもできて時間の短縮にもなります。
配達で使用されるバイクにとって、サイドスタンドは必需品なのです。

では、配達で使用しないカブユーザーは、サイドスタンドとセンタースタンドのどちらを使用すればいいのでしょうか。

サイドスタンドの特徴

サイドスタンドのメリットとしては、スタンドを掛けるのも外すのも楽なところです。カブにまたがったまま外したり掛けたりすることができて、すぐに乗り降りができます。
前後のタイヤが設置した状態なので、接地面積も広く安定して駐車することができます。
ただし、地面が柔らかいところではめり込んでしまい、バイクが不安定になるというメリットがあります。そういうときは、サイドスタンドの下に板を敷いておくと安定します。

それと、坂道で停めるときは車体やサイドスタンドが動いて外れてしまうことがあるので、シフトは1速に入れてしっかりサイドスタンドが固定されたことを確認してください。

慣れれば、またがった状態で払うことができます。

掛けるときはつま先でサイドスタンドの位置を探してさまようので、降りて掛けたほうが早いです。

センタースタンドの特徴

センタースタンドは50ccのスクーターに付いていることが多いので、スクーターに乗っていた方にはおなじみです。

地面に対して垂直に2点で接地するので、安定した状態で駐車することができます。センタースタンドを掛けると後輪が浮くので、洗車やメンテナンス時に重宝します。
実は、センタースタンドを使用するのはそういうときにしか使いません。

掛け方にはコツがあって、慣れないうちはなかなか掛けられなくて苦労します。
センタースタンドの掛け方は、YouTubeで紹介している動画がアップされているので、真似してみるとコツが掴めます。何度もやってみることが秘訣です。意外とあっさり掛けられるようになります。

硬い土の上などアスファルトじゃないところで掛けるとあっさり掛けられるので、そういうところで練習するのもいいかもしれません。

今何速に入っているのかわからない

スーパーカブC125以外のカブにはシフトインジケーターがないため、わかるのはNが点灯したときのみ。なので、加速しているときに何速まで上げたとかわからなくなることがよくあります。
たまに急激に速度を上げていくときに幻の5速を踏むことがありますが、走行中はいくらシフトを上げていってもトップギアからは変化しないので、「あ、4速まで上げていたんだな」と思うだけです。

スーパーカブC125に乗っていてもたまにシフトインジケーターを見るくらいなので、あまり不便に思ったことはありません。

停止中に1速に入れ忘れたときは、発進時にアクセルを回しても全然速度が出ないことがあります。そんなときも、「あ、シフトチェンジするの忘れてた」と慌てずシフトダウンして発進します。

最初のうちはシフト表示が出ないと不安に感じることもありますが、慣れてしまえばだいたいエンジン音でわかるので、大丈夫です。

ウィンカーの位置

カブといえば、そば屋の出前で使えるように右手だけで操作できるように設計されたというのは有名な話です。古いスーパーカブ50や90、リトルカブなどは右側に設置されているので、中古で購入する場合はご注意ください。
右側に付いていて、しかも縦スイッチになっています。上が右で、下が左です。そしてプッシュキャンセル式ではありません。

アクセルを操作しながらウィンカースイッチも操作するというのが最初は戸惑うのですが、乗っているうちに慣れてきます。

ここ10年くらいに製造されたカブシリーズはすべて左側に設置されていますので、ご安心ください。

ライトが暗い

最近のカブシリーズはLED化されましたが、一昔前のカブは非常に頼りない明るさです。古いスーパーカブ90やリトルカブを中古で購入する場合は、バルブを交換することをおすすめします。
くらげは、SP武川の「ハロゲンバルブ TB7」に交換しました。上の画像は交換後のものです。

ガソリン残量がわからない

最新のカブシリーズ以前はシートのタンクに燃料計が設置されていました。ガソリンが残り少なくなってきたら、メーターのエンプティマークが点灯します。

それまでは降りてシートを開けないとわからないのですが、カブは点灯してからも軽く100km近くは走ります。
よほど長い時間、田舎道や山道、林道などガソリンスタンドがない場所を走るとき以外は、点灯してから給油してもぜんぜん問題ないので、あまり神経質に確認する必要はありません。

サイドスタンドを立てた状態でもエンジンが停止しない

一般的なバイクにはサイドスタンドを立てた状態で発進できないように、サイドスタンドを出すとエンジン停止する、サイドスタンドキャンセラーが備わっています。

しかし、新聞配達や郵便配達で頻繁に発進と停止を繰り返すカブには、サイドスタンドキャンセラーが付いていません。そのため、サイドスタンドを出した状態でも発進できてしまうのです。
サイドスタンドを出した状態で走り出してしまい地面に引っ掛けるということは割と頻繁にあるので、古いカブに乗るときは気をつけましょう。

最新のカブシリーズにはサイドスタンドキャンセラーが設置されているため、N(ニュートラル)の状態でしかサイドスタンドは立てられません。ギアが入っている状態でサイドスタンドを出すとエンジンが停止するので、乗ったままサイドスタンドを出して停止させることもあります。

締めくくり

くらげが最初にカブに乗ったのは、中古のリトルカブを購入したときです。自宅から40km以上離れたバイク販売店で購入して乗って帰るという無謀な計画を立てていたので、従業員の方に教えてもらいながら敷地内で必死に練習しました。

1時間近くずっと練習してようやく慣れてきたので、交通量の多い環七と世田谷通りを必死に走りながら帰宅しました。

そして、話はこれだけでは終わりません。無事にたどり着いたのに自宅の駐輪場に続く急なスロープで失速し、初めての立ちごけを経験するというおまけ付きです。

そんな経験をしたこともあって、初日にはカブの操作に慣れてしまいました。練習すればなんとかなります。

よきカブライフを。

参考にしたサイト

スーパーカブ最大の特長といえば自動遠心クラッチ。その仕組みを解説するのだ。〈若林浩志のスーパー・カブカブ・ダイアリーズ Vol.29〉|Webオートバイ
スーパーカブならではの操作方法をあらためて考えてみた〈若林浩志のスーパー・カブカブ・ダイアリーズ Vol.30〉|Webオートバイ
【クラッチまとめ】仕組みから扱い方までクラッチの全てを徹底解説!|カー!と言えばグーネットピット
一体どこが便利なの? カブに搭載された自動遠心クラッチを徹底解説|CARVIEW!
スーパーカブとクロスカブの運転が楽しいのは自動遠心クラッチ付きMTのおかげ!|Motor-Fan.jp
【偉大なる“発明品”の話】カブの自動遠心クラッチは、カブに何をもたらしたか(前編)|モーサイ
【偉大なる“発明品”の話】カブの自動遠心クラッチは、カブに何をもたらしたか(後編)モーサイ
【意外と知らないバイクのこと】カブが使う「自動遠心クラッチ」って何?|@DIME
一体どこが便利なの? カブに搭載された自動遠心クラッチを徹底解説|バイクのニュース
はじめてホンダのカブシリーズに乗るとき注意するべき3つのポイント|HondaGO BIKELAB

2 Comments

ねこしっぽ

2速発進は、しない方がいいかと思います…。故障の原因になるかと。

そらいろくらげ

ねこしっぽさん

えーそうなんですね!2速発進で壊れるという話は聞いたことがありませんでした。
今度点検のときに見てもらうことにします。

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